バイオ燃料生産基盤技術の研究成果に関する
微細藻類ユーグレナ（ミドリムシ）の形質転換技術について
～スーパーユーグレナ開発へ進展、特許出願中～

学校法人近畿大学
株式会社ユーグレナ

　　近畿大学（本部：大阪府東大阪市、学長：塩崎均）の農学部バイオサイエンス学科重岡成教授、田茂井政宏准教授と株式会社ユーグレナ（本社：東京都文京区、社長：出雲充）は、独立行政法人科学技術振興機構（JST）の「CREST」における研究課題「形質転換ユーグレナによるバイオ燃料生産基盤技術の開発」（研究代表者：石川孝博 島根大学教授）の分担研究の研究成果として、「ユーグレナ※1への外来遺伝子導入方法」と「ユーグレナの形質転換体」に関する2つの特許を出願したことをお知らせいたします（特許出願：2013年2月28日）。

　本研究では、ワックスエステル醗酵経路※2関連の機構解明および有用遺伝子による形質転換※3技術を用いて、より高い光合成活性を持ち、燃料の原料となるワックスエステルを高生産できる「スーパーユーグレナ」の作出のための基盤技術の確立を目指しています。
　今回の技術確立の結果、ユーグレナの細胞増殖速度の向上、細胞サイズの拡大、クロロフィル※4量の増加、光合成活性の向上などが実現し、これにより「スーパーユーグレナ」の開発へ近づきました。なお現在は、作出した形質転換株に関する詳細なデータの取得等を進めています。
　今後は、本技術を生かし、バイオ燃料生産基盤技術の確立に向けてさらなるワックスエステルの生産効率の向上を目指します。
　今回開発した技術の詳細は以下のとおりです。

１．ユーグレナへの外来遺伝子導入方法 
ユーグレナ細胞のDNA量は他の藻類やカビ類の50～100倍あり、微生物のゲノムとしては特徴的であるとされています。また、遺伝的に極めて安定的な生物であると考えられており、外来の遺伝子が導入されてもすぐに排除される特徴がありましたが、今回の共同研究により、ユーグレナ細胞内で安定的に外来遺伝子による形質が維持される技術を確立しました。

２．ユーグレナの形質転換体 
ラン藻由来のカルビンサイクル※5関連酵素遺伝子をユーグレナ細胞に導入し、安定して外来遺伝子を発現する形質転換体を獲得しました。本技術で得られたユーグレナの形質転換体は、形質転換をしていない野生株に比べて、ユーグレナの細胞数、細胞サイズ、クロロフィル量の増加および光合成活性の向上が認められました。

■ユーグレナの増殖細胞数（期間：8日間）

■ユーグレナの細胞増殖速度の向上（期間：第1回…13日間、第2回…15日間）

■ユーグレナの細胞サイズの拡大（期間：6日間）

■ユーグレナのクロロフィル量の増加（期間：14日間）

株式会社ユーグレナについて 
代表取締役社長：出雲 充
資　本　金：9億1,421万円
本　　　店：東京都文京区本郷7丁目3番1号　東京大学アントレプレナープラザ7階
上場市場：東京証券取引所マザーズ
事業内容：微細藻類ユーグレナ（和名：ミドリムシ）を活用した機能性食品、化粧品等の開発・販売と、 二酸化炭素固定化やバイオ燃料の生産に向けた研究を行っています。

＜用語説明＞
※1 ユーグレナ（和名：ミドリムシ）
運動性のある単細胞の微細藻類（藻の一種）。ビタミン類、必須アミノ酸、DHAなど59 種類の豊富な栄養素を持つ食材としてのほか、二酸化炭素を吸収しながら光合成で育つことやバイオ燃料の原料となることから、食料問題や環境問題の 解決の一助を担う素材として注目されています。

※2 ワックスエステル醗酵経路
炭素数14個のミリスチン酸とミリスチルアルコールを縮合させたワックスエステルを主成分とするユーグレナに特異的な脂質合成経路。将来的に、ワックスエステルはバイオ燃料や化粧品としての利用が考えられています。

※3 形質転換
外部から遺伝子配列を導入し、個体あるいは細胞の遺伝的性質を変化させること。

※4 クロロフィル（葉緑体）
植物や藻類に含まれる光合成の光エネルギーを吸収する緑色の色素化合物。植物が光エネルギーを利用して、 水と二酸化炭素から糖類を合成する光合成に不可欠な成分です。

※5 カルビンサイクル
光合成反応における代表的な炭酸固定反応。ほぼすべての緑色植物と光合成細菌がこの回路を所持しています。

以上

―報道関係者お問い合わせ先―
株式会社ユーグレナ 広報IR課