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中央研究所​Central Research Institute

研究内容

中央研究所は、2025年に3つの研究所の統合により設置されました。その前身となる3つの研究所の役割を引き継いでおり、実験室規模で遂行可能な内容を中心に、幅広い分野の研究を推進しています。特に主要な研究課題となっているのは、遺伝子工学技術を活用した微細藻類の品種改良、新規素材の創出、各種素材の食品・化粧品分野における機能性研究、ならびに各種素材の新規用途探索です。また、本社(東京都港区)と地理的に近いことから、各種事業のお客様のお困りごとにお応えすべく、サンプルの分析や、研究による課題の解決を図っています。

所長メッセージ

微細藻類の大量培養、品種改良、そして生産した藻体の商品化のノウハウは当社の強みです。中央研究所 では、それらの強みを強化しつつ、新たな活用方法の創出を主課題とします。特に、微細藻類の品種改良については、これまで技術的に難しかったことが実現可能な時代になったと感じており、我々としても実用的な品種改良を推進し、様々な場面で利用可能な藻類株、及びその株に特化した培養方法を提供していきたいと考えています。微細藻類は光合成をすることから、他の既に産業利用されている従属栄養生物とは異なるユニークな代謝系を保持し、栄養素も豊富です。この微細藻類が備えている特徴を生かした先端的利用方法を提案していきたいと考えています。

中央研究所
共同所長 山田 康嗣

ユーグレナ社は、生涯にわたる健康の実現を目指しています。根本的に健康寿命と平均寿命の乖離を縮めることを考える場合、起こった症状・不調に対して対症療法的に対処するのみならず、症状・不調自体が起こらないような恒常性を保った心身づくりが重要です。恒常性を保った心身づくりが実現された結果、やりたいと思ったことにまっすぐに向き合えたり、他者にやさしくなれたりと、ヒトの前向きなエネルギーを最大化できるのではと考えます。微細藻類ユーグレナをはじめとした素材は、その実現の一助になります。ユーグレナをお手に取ってくださった皆様に、声を出せないユーグレナの代わりに、ユーグレナがどのように皆様のお役に立てるのか、いいところをお伝えすべく研究し続けます。そして、ヒトの健康とは何かを常に考え、画期的なソリューションを提供し続けていきたいと思います。

中央研究所
共同所長 中島 綾香

微細藻類の品種改良

当社では、健康食品、化粧品、燃料、アグリ事業など、幅広い製品に微細藻類を活用しています。より良い製品づくりのためには、微細藻類に“より望ましい性質”を付与することが不可欠であり、そのための品種改良研究を継続的に進めてきました。なかでもユーグレナ(Euglena gracilis)は当社の重要な素材であり、改良技術の確立は中心的な研究テーマの一つです。
ユーグレナは1950年代からモデル生物として利用されてきた一方で、一般的な微生物に比べて品種改良が進めにくい生物として知られていました。当社ではこの課題を克服するため、外部研究機関との連携のもと、技術開発を段階的に積み重ねてきました。その結果得られた2つの手法、「自然突然変異を利用した長期的な品種改良」と、「ゲノム編集による精密で迅速な性質改変」の両輪で研究を推進しています。これらの技術を適切に組み合わせることで、当社の幅広い事業領域に貢献する系統を作製し、社会実装をめざして研究開発に取り組んでいます。

自然突然変異を利用した品種改良

ユーグレナに対して重イオンビームを照射し、自然突然変異を効率よく誘導する技術が確立されました。これにより、形態的な違いが目に見えるものも含め、多様な特性をもつユーグレナ系統を得ることが可能となり、改良の選択肢が大きく広がりました。
続いて、細胞分取装置(セルソーター)を用いて、個々の細胞を効率的に選別する技術が導入されました。これにより、多数の候補から目的の細胞だけを迅速に選抜できるようになり、改良の指標にできる性質幅が広がっただけでなく、そのスピードも飛躍的に向上しました。
さらに近年では、重イオンビームだけでなく、中性子線も自然突然変異の誘導に利用可能となりました。複数の放射線源を使い分けることで、ユーグレナに多様な変化を与えることができ、より幅広い改良ニーズに対応できる環境が整っています。

図:自然突然変異を利用した品種改良方法例

ゲノム編集技術の確立:ユーグレナ研究の大きな転換点

自然突然変異を利用した育種とは別に、ユーグレナへのゲノム編集技術の適用も実現しました。ユーグレナはゲノム編集と非常に相性が良く、細胞外で作製したタンパク質核酸複合体(RNP)を導入するだけで高効率に遺伝子変異を導入できます。そのため、ユーグレナは現在、微細藻類の中でも特にゲノム編集が行いやすい生物の一つとして位置づけられています。
この技術を活用し、産業利用につながる特徴を持つ系統の作出を行っており、遊泳できない系統、ワックスエステル(脂質)を合成しない系統、など公開されている以外にも多様な系統の作出を行っています。

図:ユーグレナに対するゲノム編集による変異導入イメージ

新規素材の創出

中央研究所では、他の研究所とともにユーグレナやクロレラをはじめとする微細藻類の培養・粉末化技術を基盤に、多様な事業領域で活用できる素材開発を進めています。微細藻類は、豊富な栄養素、環境適応性、特異な代謝能力など、他の生物には見られない独自の性質を備えています。当社はこうした微細藻類の潜在力に着目し、新たな価値を生むバイオマテリアルとして社会に還元することを目指しています。
当社では、次世代の製品群を創出するため、新たな微細藻類資源の探索、独自機能を有する成分の発見、そしてそれらを活かした新規素材の設計・実証までを一体的に推進しています。これらの研究開発は、食品・化粧品・バイオマス材料・発酵食品など多方面で持続的に価値を提供する源泉となっており、微細藻類の可能性を最大限に引き出すことで、当社の事業基盤の強化と将来市場の創出につながると考えています。

① 新たな微細藻類資源の探索

世界各地の環境に生息する微細藻類を対象に、新規藻類資源の探索と評価を行っています。
栄養特性、希少成分の含有、増殖性、安全性、工業利用への適性などを多角的に解析し、事業化ポテンシャルを有する藻類を選抜します。
有望な藻類については、他研究所とも連携しながらスケールアップ培養技術の確立、用途別加工技術の開発を含めて、商業生産・上市までを推進します。

図:オーランチオキトリウム粉末(左)と顕微鏡写真(右)

素材の代表例:オーランチオキトリウム

② 藻類 × 他素材・技術の融合

微細藻類を単独で用いるだけでなく、他の微生物や素材、製造技術と組み合わせることで、新たな機能価値を創出する取り組みを進めています。
例えば、藻類素材が発酵微生物の働きをどのように変化させるか、その結果、発酵産物の成分にどのような影響を与えるか等を解析し、藻類を、その機能を引き出す触媒的存在として活用することで、既存技術では得られなかった素材の価値を生み出すことを目指して研究開発を推進しています。

図:ミドリ麹の完成品

素材の代表例:ミドリ麹

③ 既存製品からの抽出・精製・エキス化

すでに事業化されている藻類素材を対象に、成分レベルでの再評価を行い、新たな機能素材としての価値を引き出す研究も行っています。
製品粉末や培養物から抽出・精製・分解プロセスを設計することはもちろん、目的に応じて新規株の開発、培養工程の最適化も含めて検討し、用途に応じたさらなる高付加価値化を行います。
これにより、藻類リソースを余すことなく活用する「多段階利用」も目指しています。

図:精製パラミロン粉末(左)とパラミロンの電顕画像(右、撮影:青山学院大学 福岡伸一教授)

素材の代表例:精製パラミロン

微細藻類をはじめとした自社素材の機能性研究

中央研究所では、ヒトの生体機能や健康に関する最新の科学的知見を踏まえながら、ユーグレナをはじめとする微細藻類素材が、食品・化粧品としてどのように私たちの健康や美容に貢献できるのかを明らかにする機能性研究に取り組んでいます。微細藻類には、人類がまだ活用しきれていない独自の代謝特性や生理活性成分が数多く存在しており、その可能性を正しく理解し実証することが、新しい価値を持つ素材開発の基盤になります。当研究所では国内外の研究機関とも連携し、科学的根拠に基づく機能解明と安全性評価を進めることで、素材の信頼性向上と社会実装を加速しています。
これらの機能性研究は、「ヒトは何によって健康になるのか」「健康とはどのように維持されるのか」といった根源的な問いに科学的に向き合う取り組みでもあります。微細藻類素材の可能性を最大限に引き出し、科学的知見を事業へと還元することで、人の健康と地球の健全性がともに持続する未来を実現することを目指しています。

ユーグレナ粉末の摂取によるストレスによる諸症状の抑制や睡眠の質改善に対する効果の解明

ユーグレナを摂取された方々から、心理面や睡眠面でのポジティブな変化に関する声が寄せられており、これらの実感を科学的に裏付けるため臨床試験を実施しました。その結果、微細藻類ユーグレナ粉末を継続的に摂取することで、作業ストレス負荷時の自律神経バランスが整いやすくなり、イライラ感・緊張感の抑制、さらに夜間の睡眠の質の向上が示されました。
ストレスは自律神経・内分泌・免疫のバランスを乱し、意欲の低下や睡眠障害など多様な不調をもたらします。本研究成果は、ユーグレナ摂取がこうしたストレス関連の生体反応に多面的に作用し、心身の疲労や睡眠不足といった現代的な健康課題の改善に寄与する可能性を明らかにしており、当社製品の機能性表示商品の表示根拠の一つとなっています。

図:イライラ感、緊張感、及び睡眠への満足度の経時的変化量

パラミロンの免疫調節機能への関与の解明

ユーグレナの摂取により、インフルエンザ感染症状を緩和することや感冒症状の発症日数や重症化を抑制することが明らかになっています。一方で、アトピー性皮膚炎に代表されるようなアレルギー症状の緩和についても明らかになっており、免疫のバランスの調整に寄与することが示唆されています。

図:ユーグレナの継続摂取による感冒症状(かぜ様症状)諸症状の重症度への影響

ユーグレナ粉末の持つ免疫調整効果は、主にパラミロンに由来するとされてきました。パラミロンとそれ以外のユーグレナ成分のそれぞれの効果を直接的に比較するための実験として、パラミロンを高濃度に含むユーグレナ粉末と、ゲノム編集技術によって「パラミロンを蓄積しないユーグレナ」を用いて作製したパラミロンを一切含まないユーグレナ粉末を比較し、免疫細胞への影響を評価しました。マウス脾臓由来細胞にパラミロンを添加した実験では、T細胞およびB細胞の活性化が濃度依存的に確認され、さらにパラミロン高含有ユーグレナ粉末ではこれらの細胞活性化マーカー(CD69、CD86)が明確に上昇した一方、パラミロンを含まないユーグレナ粉末では活性化がほとんど見られませんでした。
これらの結果は、ユーグレナの免疫調整機能が主にパラミロンによって担われていることを強く示唆するものであり、これまでの臨床・基礎研究で示されてきた感染症状緩和や免疫バランス調整作用の科学的な裏付けをさらに強化する知見となりました。

図:マウス脾臓細胞におけるT細胞の活性化マーカーCD69とB細胞の活性化マーカーCD86の遺伝子の発現

微細藻類をはじめとした自社素材の応用用途探索

当研究所では、バイオマスの5Fの考え方に従い、ユーグレナ等の自社素材自体や、蓄積する特有成分の食品以外での活用方法を検討するため、大学・企業など外部機関との共同研究を通じて応用用途の開発を推進しています。例えば、ユーグレナが高度に蓄積する代表的な成分として、結晶性β-1,3-グルカンであるパラミロンが知られています。パラミロンは食品として摂取した際の免疫機能の向上など多様な効果が報告されている一方、その独特の結晶性粒子構造と物性により、食用以外の分野でも様々な用途での活用が期待されます。

パラミロンの化粧品材料としての利用

パラミロンは、直径数μm程度の均一で滑らかな天然微粒子であり、この特徴から化粧品用途に適した素材として期待されています。当研究所では、化粧品原料としての可能性を検証し、これまでに 肌免疫を介した保湿作用、抗炎症作用、洗顔料における泡質改善 など複数の機能を確認してきました。
さらに近年、パラミロンの結晶性粒子構造と不溶性に着目し、花粉・PM2.5などの微粒子が肌に付着するのを抑制する「物理的バリア機能」を明らかにしました。パラミロンを配合した処方では、微粒子の付着量が減少し、洗浄後の肌のきめに残りにくくなる傾向が確認されており、外部刺激から肌を守る機能性素材としての価値が高まっています。

図:パラミロン原末を配合したゲルを前腕内側部に塗布し、微粒子モデルをすりこんだ様子

パラミロンのバイオマスプラスチック材料としての利用

パラミロンは、多糖類がもつ性質を活かして化学修飾が可能であり、とくに水酸基を利用した変性により、一般的な樹脂加工に対応できる熱可塑性材料へと変換できます。また、水に不溶な結晶性多糖であるため分離精製が比較的容易で、β 1,3 グルカン主鎖が持つ構造的特徴を活かしたプラスチック素材としての応用が期待されます。
パラミロンを含む多糖類を主原料としたバイオマスプラスチックを「パラレジン」と呼称し、開発を進めています。パラレジンは、高いバイオマス度を確保できることに加えて、生分解性を付与する際の設計自由度が高く、用途に応じて物性を柔軟に調整できる点が特長です。これにより、樹脂筐体部材からアパレル用途に至るまで、幅広い製品分野への展開が期待されています。この社会実装を実現するため、当社はパラレジンコンソーシアムに幹事企業として参画し、材料規格化や量産技術の確立、用途拡大に向けた研究開発を推進しています。

図:パラミロンを多く貯めたユーグレナ(左)とパラミロンパラレジン(右)

パラレジンジャパンコンソーシアム

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