研究紹介
硫黄化合物の網羅的測定解析
サルファーインデックス技術は、硫黄化合物に特異的な誘導体化試薬を用いたLC-MS/MSを実施することにより、一般的な手法では検出できない微量な硫黄化合物の高感度かつ網羅的な検出や、有機硫黄化合物、無機硫黄化合物、さらには酸化型、還元型を問わず約50種類の硫黄化合物を同時に分析することができる技術です。生体試料や食品、培養プロセスにおける酸化還元状態や代謝物量を把握し、生命現象の新規なメカニズムの発見、製造プロセスの改良に貢献します。
なぜ硫黄なのか
硫黄は地球規模で循環している
炭素循環や窒素循環があるように、硫黄にも循環があります。
硫黄の代謝は、生物によって得手不得手がはっきりしており、特に無機硫黄化合物を有機硫黄化合物に変換する「同化」が得意な微生物は限られています。多くの微生物や植物(農作物)は硫黄化合物の同化が苦手であり、ヒトを含む動物は硫黄化合物を同化する能力を有しません。
つまり、硫黄化合物を網羅的に分析することで、人から農作物まで、どのようなものを摂取し、どのような環境で育ったのか、生活環境・生育環境がよくわかるのです。
硫黄で代謝全体を俯瞰できる
硫黄代謝系は、解糖系、TCAサイクルから成る中枢代謝系と寄り添う形で存在しています。解糖系、TCAサイクルはそれぞれ核酸代謝系、アミノ酸代謝系へとつながっており生物が生存するために相互にバランスをとっています。
サルファーインデックスサービスは、硫黄を解析するだけでなく、硫黄代謝を把握することで窒素や炭素代謝の状況を考察し、次のステップとして中枢代謝系、核酸代謝系などに焦点を絞ったフォーカスドメタボローム解析で検証し、最終的な答えを導き出します。
硫黄代謝系は、分析すべき化合物数が少なく、考察が比較的容易であることが利点です。
硫黄はさまざまなタンパク質を修飾する
タンパク質のシステインチオール基は、その三次元構造の形成など機能性を発揮するうえで、非常に重要な官能基です。そのシステインチオール基は、活性酸素や一酸化窒素により化学修飾され、スルフェン酸、S-ニトロシル、ジスルフィドの状態になりその機能性が変化します。硫黄はそれらの化学修飾された部分をスルフヒドリル化することにより、その活性を高めたり抑制したりします。
これまでの実績
すでに多くの分野で活用されています。
応用例1(食品)
食品:品質管理、プロセス管理
品質管理 | サルファーインデックス技術を用いることで、食品が同じ品質で製造できているかをチェックすることができます。また、これを応用すれば、他社製品との違いを消費者にわかりやすく伝えることも可能です。 |
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プロセス管理 | 微生物を利用した発酵食品(お酒や味噌、醤油など)の製造プロセス管理に、サルファーインデックス技術が有用です。硫黄化合物は、微生物の発酵プロセスの活動に伴って生成されるため、発酵プロセスの状態を反映するのです。 |
応用例2(医学)
健康・医療:疾患マーカー探索、細胞培養管理
疾患マーカー探索 | 硫黄代謝物は生理機能調整にも深く関わっているため、疾患マーカー探索の指標にサルファーインデックス技術が有用です。特に、1サンプルあたりの費用を安く抑えることができるので、限られた予算の中でも多検体を比較解析することが可能です。血液、尿、唾液、糞便、いずれも分析可能です。 |
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細胞培養管理 | 多能性幹細胞の増殖性維持や分化能維持に、硫黄化合物(メチオニンとSAM)が深く関わっています。また、抗体医薬を産生する細胞であるCHO細胞はシステインを多く要求するため、細胞培養管理の指標にサルファーインデックス技術が有用です。 |
応用例3(農学)
土壌や環境サンプル分析、農作物の品質評価
土壌分析 | 土壌は、一般的に物理性・化学性・生物性で評価されますが、生物性を評価する方法は高額になってしまい、実際の農業に応用できないか、情報がきわめて限られてしまうものがほとんどです。サルファーインデックス技術を使えば、土壌の微生物状態を硫黄代謝という視点で、網羅的に評価することができます。 |
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品質評価 | 農作物は、1つの生命体として硫黄代謝を有します。その硫黄代謝をサルファーインデックス技術で分析することで、対象となる野菜を甘味や苦味など断片的な味覚や大きさや重さなどとは異なる、農作物の本質に迫る指標をもとに特徴づけることが可能です。 |