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微細藻類ユーグレナと海藻のカギケノリの混合飼料が反芻家畜のメタン排出を軽減することを確認
反芻家畜の健康とメタン排出量軽減に配慮した飼料原料としての可能性
Euglena Co., Ltd.
株式会社ユーグレナ(本社:東京都港区、代表取締役社長:出雲充)は、国立大学法人北海道国立大学機構帯広畜産大学の生命・食料科学研究部門・西田武弘教授と共同で行った研究において、微細藻類ユーグレナ(以下、「ユーグレナ」)と海藻のカギケノリ※1の混合飼料が、反芻家畜※2の健康を損なうことなく排出されるメタン※3の量を軽減することを確認しました。なお、この研究成果は学術雑誌animalsに掲載されています※4。
※1 カギケノリ:紅藻と呼ばれる海藻の一種
※2 反芻家畜:牛や羊、ヤギなどの反芻動物の家畜。一度飲み込んだ食べ物を再び口に戻して咀嚼し、胃が4つあるのが特徴
※3 メタン:CH4。二酸化炭素に次いで気候変動への影響が大きな温室効果ガス。湿地や水田、家畜および天然ガスの生産など、その放出源は多岐に渡る
※4 https://www.mdpi.com/2076-2615/13/5/796
左・ユーグレナ粉末(イメージ)、右・カギケノリ(赤紫色の海藻、イメージ)
【背景】
畜産業は人間のタンパク質の供給源として人間活動にかかせない産業ですが、近年ではその環境負荷や飼料原料の不足・高騰などの課題に直面しており、代替となる環境負荷の少ない持続可能な飼料原料を見つけることが急務となっています。なかでも、牛をはじめとする反芻家畜が、飼料を消化する過程で胃から放出する大量のメタンは、温室効果ガス全体の約5%を占めるとされ、気候変動に及ぼす影響が大きく、その抑制・軽減は喫緊の課題です。
その対策として近年、反芻家畜からのメタン排出量を削減する飼料原料の選択肢の一つとして、藻類が期待されています。これまでの研究により、カギケノリは、ブロモホルムという含有物質を通じて反芻家畜の消化器官で生成されるメタン量を軽減する効果で知られています。しかしながら、カギケノリの飼料への含有量が多くなった場合、家畜がエネルギー源とする揮発性脂肪酸(VFA)の組成への影響などの懸念があることなどが挙げられています。
一方、ユーグレナでも、反芻家畜への給餌がメタン排出量を軽減させることが確認されています※5。ユーグレナは、タンパク質や脂質、炭水化物のほか、ビタミンなどの栄養素を豊富に含んでいることから、大豆やトウモロコシ、小麦などの従来の飼料原料と同等かそれ以上の素材となる可能性も期待できます。
本研究では、ユーグレナとカギケノリの混合物を飼料と部分的に置き換え、家畜の健康とメタン排出量軽減との両方に配慮した飼料の可能性を検討しました。
※5 2017年4月5日のニュースリリース「反芻家畜への飼料の一部を微細藻類ユーグレナで代替することによりメタン発生量を減少させる効果を確認しました」https://www.euglena.jp/news/20170405-2/
【研究の内容と結果】
本研究では、
①カギケノリを1%添加した飼料
②一部(10%、25%)をユーグレナに代替した飼料
③カギケノリを1%添加し、一部(10%、25%)をユーグレナに代替した飼料
を作製し、牛から採取した胃液に浸した後で発生するガスの成分の変化を観察することで、メタン発生量への影響などを評価しました。
その結果、通常飼料と比較して、①では胃から出るメタンの量が21%減少することが確認され、②ではそれぞれ4%(ユーグレナ10%)および11%(ユーグレナ25%)減少することが確認されました。③では29.9%(カギケノリ1%、ユーグレナ10%)と40.0%(カギケノリ1%、ユーグレナ25%)と、メタンの量が有意に減少することが確認されました(図1)。
図1 牛の胃液への各配合飼料添加時のメタン発生量
また、反芻家畜の主要なエネルギー源は、第一胃内で産生される揮発性脂肪酸(VFA)で、その組成は飼料により影響されることが知られています。
④カギケノリを添加(1%、5%)した飼料
⑤一部(10%、25%)をユーグレナに代替した飼料
⑥カギケノリを1%添加し、一部(10%、25%)をユーグレナに代替した飼料
⑦カギケノリを5%添加し、一部(10%、25%)をユーグレナに代替した飼料
を作製し、胃液に各配合飼料を添加した際の揮発性脂肪酸を測定、牛への健康影響の評価を行いました。
その結果、揮発性脂肪酸(VFA)の減少は、⑦の25%ユーグレナに代替したものにて有意に確認され、それ以外の条件では牛への悪影響は、ほとんどないことが明らかになりました(図2)。
図2 牛の胃液への各配合飼料添加時のVFA発生量
本研究成果は、反芻動物の飼料において、カギケノリ1%添加にユーグレナ25%まで配合した組み合わせが、牛の健康に悪影響を及ぼさず、メタン排出量の軽減に寄与し、新たな代替飼料の原料としての可能性を示しました。
今後も当社では、微細藻類ユーグレナの飼料としてのさらなる安全性を確保するとともに、飼料として活用した際の付加価値の向上等に関する研究を推進し、飼料利用の事業化を目指します。
<株式会社ユーグレナについて>
2005年に世界で初めて微細藻類ユーグレナの食用屋外大量培養技術の確立に成功。微細藻類ユーグレナ、クロレラなどを活用した食品、化粧品等の開発・販売のほか、バイオ燃料の製造開発、遺伝子解析サービスの提供を行っています。また、2014年より行っている、バングラデシュの子どもたちに豊富な栄養素を持つユーグレナクッキーを届ける「ユーグレナGENKIプログラム」の対象商品を、継続的に実施。「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」をユーグレナ・フィロソフィーと定義し、事業を展開。https://euglena.jp
― 本件に関するお問い合わせ先 ―
株式会社ユーグレナ コーポレートコミュニケーション課