石垣島ユーグレナに次ぐ新たな素材開発をめざし
秋田県発の麹菌に着目
ユーグレナ社の主力素材と言えば、「石垣島ユーグレナ」だ。サプリメントや飲料、さらには化粧品の原料に至るまで、いまや広く認知される存在に成長してきた。
一方で、ユーグレナのさらなる可能性を追求すべく、その特性を生かした新素材の開発も歩みを進めていた。研究のなかで、ユーグレナの持つ乳酸菌を活性化させる作用が、菌類と相性がよいのではないかという仮説が生まれる。そこで、菌類のなかでも「国菌」と指定される麹菌に着目し、「ユーグレナ×麴菌」のプロジェクトが開始したのである。
このプロジェクトを推進するにあたり、カギとなるのは麹菌のプロフェッショナルとタッグを組むことだった。そこで、以前からユーグレナ飼料の共同研究でつながりのあった、秋田県に掛け合うこととなった。
「当時の新素材開発チームが秋田県に掛け合い、秋田今野商店さんをご紹介いただきました。秋田今野商店さんは、全国に10社ほどしかない種麹屋さんのなかでも、100年以上続く老舗中の老舗。今でも手作りで麹をつくっている会社です。頼りになるパートナーを得て、ユーグレナと麴菌を組み合わせた新素材の研究開発が始まったそうです」
そう語るのは、素材・海外事業部の安藤久人。現在、ミドリ麴の商品やOEM営業を担当している。
「麹菌は、ほかの食材を発酵させることで素材を柔らかくし、甘みやうまみを引き出す効果があります。また、ユーグレナには乳酸菌を活性化させる効果があることは以前より研究で証明されていましたので、この2つを掛け合わせれば非常によい素材になるのではと期待されていました。何度も試行錯誤を重ね、2年の月日を要して遂に、ユーグレナと麹菌のベストな配合バランスを発見し、『ミドリ麹』が完成したのです」
満を持して完成したミドリ麹
しかし順風満帆とはいかなかった
ミドリ麹のつくり方はこうだ。
蒸した米にユーグレナと種麹を振りかけ、手で混ぜ込む。その後、一粒ずつぱらぱらとなるように手でほぐしていく。それを一日置き、麹蓋のなかに入れて、麹菌を育成。乾燥させたものが、「ミドリ麹」となる。
2年間の開発期間を経て完成した「『ミドリ麹』は、まさにプレミアムな麹」だと、安藤はいう。
「一般的に麹には酵素力価があり、整腸作用と美肌効果が期待されています。ミドリ麹は一般的な麹よりも酵素力価が数倍高いというデータが得られました。酵素は年齢とともに減少するので、食事からとることが大切になりますが、ミドリ麴はまさに最適ではないでしょうか。それから、最近ではエルゴチオネインという注目の成分も含まれており、活性酸素除去や認知症予防への効果も期待されています。ミドリ麹はエルゴチオネイン含有量も一般的な麹の約3倍多く含まれているデータも出ています。」
老若男女問わず、さまざまな年代の人にもうれしい効果が期待できるミドリ麴。ユーグレナに次ぐ新素材になりえるのではと、社内からも期待が寄せられていた。
「ミドリ麹が完成し、特許も無事取得できました。まずは自社商品として摂取しやすいサプリメントを発売し、さらにOEM原料としてさまざまな企業さまの商品に活用していただこうと営業活動を行いました。今までにない新素材ということもあり、企業さまからの反応も上々で『これはひょっとすると』と思ったのですが、大口のお取引先さまのほうでトラブルが起き、販売量が減ってしまい…残念ながら当初はユーグレナに次ぐ新素材となるまでには至りませんでした」
リポジショニングで認知拡大へ
ミドリ麴を日本全国へ届けたい
想定外のトラブルに見舞われるも、安藤はあきらめなかった。ミドリ麹という素材ブランドを、一から仕切りなおすことにしたのである。
「改めて、ミドリ麴の価値を見直しました。お客さまにわかりやすい形でストーリーを伝える必要があると考え、一番の課題である認知の低さを改善するために、原点である秋田県に立ち戻り企画をつくることにしました。」
そして、ミドリ麹が完成した2018年から約2年後、ミドリ麴のリポジショニング施策がスタートする。
「厳しい状況ではありましたが、ミドリ麴のすばらしさは、試してもらえればわかってもらえると信じていました」と安藤は説く。
「そのために、ミドリ麴の生まれの地である秋田県で、いろいろな施策を行いました。このときも、秋田今野商店さんには大変お世話になりました。秋田今野商店の今野社長が県内の企業に発信していただき、協力会社を募りました。すると、多くの地元企業から賛同の声をいただいたのです。ミドリ麹が地元素材を使っていることももちろんですが、この素材が有名になることで地元地域への貢献になることにも共感いただけたようです」
ミドリ麴とのコラボ商品開発に名乗りを上げたのは、県内で有名な老舗企業ばかりであったという。そのため、「あの企業がつくったのか」と地元民からも受け入れられ、店舗をたくさん持つ企業では、店頭でお客さまの目に触れる機会も多かったようだ。
「今野社長の力をお借りし、地元の有力企業に多くのスウィーツやドリンクなどを開発いただけました。この施策によって、秋田県内では少しずつミドリ麴の存在を知っていただけたかと思います。ここで得た知見や経験を活かして、これからは全国区の認知施策を行う予定です」
安藤のなかでは、ミドリ麴を広めるためのアイディアがすでにたくさんあるという。ミドリ麴の快進撃は、まだ始まったばかりである。
2023年6月掲出
登場人物
- 素材・海外事業部
OEM・素材営業課 課長安藤 久人 -
2017年6月に中途仲間として入社。OEM・素材営業課にてお客さまとのコラボレーション商品開発に従事。
「日本人の食文化として発酵食品は馴染みが深いですが、ミドリ麹はその中でも格別です。甘酒や味噌のようにミドリ麹が知られるように頑張っていきたいと思います。」
euglena Projects
vol.00
バングラデシュの子どもたちを
救う素材を探せ。
vol.01
誰もなし得ていない、ユーグレナの
屋外大量培養技術を確立せよ。
vol.02
ユーグレナを
300億円市場に育て上げよ。
vol.03
バングラデシュの
全ての小学校に給食を。
vol.04
煙突から排出されるCO2で
ユーグレナを培養せよ。
vol.05
ユーグレナの化粧品事業を
立ち上げよ。
vol.06
日本初のバイオジェット燃料
製造プラントを建設せよ。
vol.07
「ミドリムシ」の名前を
武器にせよ。
vol.08
中国にユーグレナを
普及せよ。
vol.09
スーパーユーグレナを
獲得せよ。
vol.10
バングラデシュの
貧困問題を
緑豆事業で解決せよ。
vol.11
ユーグレナでタケダと
新商品を開発せよ。
vol.12
下水処理場の下水を活用し、
ユーグレナを培養せよ。
vol.13
ユーグレナの仲間の
「行動指針」を作成せよ。
vol.14
日本独自の技術で、
ユーグレナを培養せよ。
vol.15
仲間がより働きやすい
オフィスを追求せよ。
vol.16
ゆーぐりん保育園を
オフィスに併設せよ。
vol.17
ユーグレナで石垣島の
地域活性化に貢献せよ。
vol.18
ユーグレナの認知度を上げる
新商品を共同開発せよ
vol.19
ユーグレナのカフェを
石垣島で開店せよ。
vol.20
ユーグレナを飼料にして
比内地鶏を育成せよ。
vol.21
ユーグレナ入りディーゼル燃料を
いすゞ自動車と共同で実用化せよ。
vol.22
ユーグレナを使った
バイオ燃料を生産せよ。
vol.23
研究系ベンチャーを
ヒト、モノ、カネで支える
新しいファンドを確立せよ。
©2018 MELTIN MMI
vol.24
ユーグレナとクロレラで世界初の
ASC-MSC藻類認証を取得せよ。
vol.25
グループ企業との
シナジーを構築せよ。
vol.26
新しい仲間と、
遺伝子レベルで人を健康にせよ。
vol.27
自由が丘と
ユーグレナを普及せよ。
vol.28
ユーグレナサプリメントの
加工工場を立ち上げよ。
vol.29
理科のチカラで石垣島の
地域活性に貢献せよ。
vol.30
新しいユーグレナの
基幹化粧品を開発せよ。
vol.31
ロヒンギャ難民の
食料問題解決に貢献せよ。
vol.32
ユーグレナ由来の美容成分を
研究解明せよ。
vol.33
学生のチャレンジを応援!
通年採用を開始せよ。
vol.34
ユーグレナとクロレラで
ハラール認証を取得せよ。
vol.35
健康寿命を伸ばすユーグレナの
可能性を発見せよ。
vol.36
竹富島のクルマエビ養殖事業を
発展させよ。
vol.37
「G20軽井沢」にてユーグレナバイオディーゼル燃料で自動車を走らせよ。
vol.38
石垣島ユーグレナの魅力を伝えるキャラクターを企画せよ。
vol.39
CFO(最高未来責任者)を募集・選考せよ。
vol.40
国産カラハリスイカを
栽培せよ。
vol.41
日本初となる「バーチャルオンリー
株主総会」を開催せよ。
vol.42
次世代バイオディーゼル燃料を
普及させよ。
vol.43
コーポレート・
アイデンティティを刷新せよ。
vol.44
石垣島生まれの
ユーグレナを浸透させよ。
vol.45
ユーグレナ由来の
肥料研究を加速させよ。
vol.46
日本の空をバイオ燃料で
クリーンにせよ。
vol.47
オフィス環境を改善し、
仲間の生産性を向上させよ。
vol.48
化粧品における
サステナビリティを追求せよ
vol.49
次の新素材「ミドリ麹」の
価値を世に拡げよ。
vol.50
ユーグレナの
ESG経営を加速させよ
vol.51
未来世代アドバイザリーボードを
設置せよ。