ユーグレナ社が
バーチャルオンリー株主総会の
日本初の事例になる
2021年6月、「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律」が可決・成立し、上場企業を対象に、場所の定めのない株主総会、いわゆるバーチャルオンリー株主総会の開催が可能となった。そこで、同年8月に開催が決まっていた臨時株主総会は、すでにハイブリッド型での準備をはじめていたにもかかわらず、ユーグレナ社は急遽「バーチャルオンリーで開催する」と方針を変更した。
急な変更であるにもかかわらず、バーチャルオンリー株主総会の開催にこだわった理由について、薗田は語る。
「前例がないことに対し最初はやはり不安が先に立ち、実際のところ『どこかが実施してからでよいのでは』という気持ちはありました。
それでも『いや、やってみよう』と考えが180度変わった背景には、挑戦を後押しするユーグレナ社の社風がありました。また、社外も含めた仲間が惜しまずに応援・協力してくれることがわかっていたので、運営の手間を除くと、どんなに考えても挑戦しない合理的な理由が見つからなかったんです。
この挑戦に対して、出雲さんはもちろん、取締役たちも賛成でした。今後、バーチャルオンリー株主総会を開催する企業は増えてくるでしょうし、そうであれば、私たちが先陣を切って取り組もうと言っていただけました。」
しかし、限られた時間の中での準備は、予想以上に苦労したと薗田は言う。万が一に備えて、バーチャルオンリー型とハイブリッド型、両方のパターンで準備を進めていたからだ。
「バーチャルオンリー型での開催を決めてはいたものの、開催のためには、経産省と法務省に対して申請書を提出し、経済産業大臣及び法務大臣の『確認』を受ける必要がありました。スケジュール的にギリギリだったことから、招集通知とシナリオについてはバーチャルオンリー型とハイブリッド型、両方の準備をし、招集通知校了前に『確認書』をいただければバーチャルオンリー型で、間に合わなければハイブリッド型でいく、としていました。この『2パターンの準備を同時に行う』というのが大変だったことの一つです。
幸い、経産省のご担当者をはじめ関係各所のスピーディかつ丁寧なフォローのおかげで、想定よりも申請準備はスムーズに進み、招集通知校了直前に『確認書』を受領できましたので、その時点でバーチャルオンリー型に舵を切ることができたのです。」
バーチャルオンリー型での開催に必要不可欠な、経済産業大臣及び法務大臣の『確認』を受けるために、総会の運営において問題がないかという観点から子細なチェックが行われた。通信障害に対するバックアップの準備や、インターネットを使用できない株主への配慮、責任者の配置、マニュアル作成など、多数の項目を満たす必要があった。
ユーグレナ社では以前より社内のメイン回線が切れたときのためのサブ回線があったが、「さらに念には念を」と、追加でサブ回線も切れたときのための回線も用意し、通信障害については特に入念に準備が行われた。
「また、インターネットを使用できない株主さまのフォローについても工夫しました。インターネットを使用できないということは、バーチャルオンリー型の株主総会では当日の議決権行使はできないということですので、まずは招集通知で書面による事前の議決権行使を促しました。そのうえで、当日の音声をリアルタイムで聴いていただけるよう電話会議システムを準備し、また、田町オフィスの会議室でこちらが準備したPCを使っていただける体制も整えていました。いずれも事前申し込みとしたところ、電話会議システムの利用は1名、会議室での出席希望は申し込みがありませんでしたが、準備はしておいて良かったと思っています。」
客観性・透明性・信頼性の高い
株主総会にするために
デメリットをなくす運営を徹底した
リアル総会とバーチャル総会の大きな違いの一つに、質問対応がある。
「会場のあるこれまでの株主総会では、質問をする際は挙手をして、議長が許可した場合のみ発言が可能となり、その内容は会場全体で共有されます。一方、バーチャル総会では、ハイブリッド型でもバーチャルオンリー型でも、オンラインで出席している株主さまは視聴画面から自由に質問が可能です。代わりに、他の株主さまがどのような質問をしているのかはわからないことが多く、ユーグレナ社のバーチャル総会も同様です。
このことから、特にバーチャルオンリー型の株主総会では、企業側が不都合な意見や質問を恣意的に排除することで総会の客観性・透明性・信頼性を損なうという弊害、いわゆるチェリーピッキング問題を伴うといわれています。」
今回はこの問題について、顧問弁護士のほか、バーチャルオンリー株主総会の制度設計に携わった専門の弁護士に直接相談しながら、綿密な準備をして取り組んだという。
「事前準備を進める中で、バーチャルオンリー株主総会の普及が進んでいるアメリカでは、チェリーピッキング問題に対する懸念から、株主側はバーチャルオンリー型を歓迎していないということを聞いていました。そこで私たちは、株主さまに安心していただけるよう『事前質問を含め、いただいた質問にはすべて回答する』方針を初期の段階で決定し、そのことを招集通知にも明記しています。実際に、個人のプライバシーの侵害となる可能性がある等、公開に支障があるものを除き、ユーグレナ社のWebサイトにすべてのQAを掲載しました。
日本で初めて開催されるバーチャルオンリー株主総会ですので、私たちのこの株主総会が今後の印象を決めてしまいます。後に続く他の企業のためにも、想定できる不安材料は徹底してクリアにしておきたいという気持ちがありました。」
参加した株主の99.5%が
「バーチャルオンリー開催を評価する」
と回答
ユーグレナ社が開催した日本初のバーチャルオンリー株主総会は、大きなトラブルに見舞われることもなく無事に終了した。終了後、参加した株主に対してアンケートを実施したところ、予想以上の高評価に、バーチャルオンリー株主総会への手ごたえを感じたという。
「会の終了後、株主さまへアンケートを実施したのですが、回答率が非常に高く、出席された株主さまの約80%にご回答をいただきました。また、その中で99.5%の株主さまが『バーチャルオンリー開催を評価する』とご回答くださり、その結果を見てようやく、『やってよかった』と感じることができました。」
「また、関東以外にお住まいの株主さまの出席割合が増えたこともわかっています。2020年にハイブリッド型で開催した際にも、リアル開催と比べて、遠方にお住まいの株主さまがより多く出席してくださったという手ごたえを感じていました。
関東以外の株主さまの出席割合は、2019年のリアル総会ではわずか6.4%だったところ、2020年ハイブリッド型では27.3%、今回のバーチャルオンリー型では33.8%となり、遠方からのご出席が着実に増えています。特に北海道や近畿地方からの割合が高くなってきており、アンケートでも『日本初のバーチャルオンリー株主総会に参加できて嬉しい。遠方や高齢、仕事等で参加できなかった方も参加できるようになり、これもSDGsの一つだと思う』とコメントをいただきました!」
これからの株主総会もバーチャルオンリー型の開催とするのか、今後の方針について薗田は言う。
「会社としての方針は未定ですが、個人的にはリアルでのコミュニケーションも大切にしていきたいと考えています。というのも、事前に『バーチャルオンリー株主総会を開催します』とのリリースが出た際には株主さまから、
『出雲社長に直接会うのを楽しみにしていた』
『株主の友達と一緒に参加しようと話していた』
といったお声もいただいたこともあり、非常にありがたく思ったからです。
一方で、前述のように遠方からのご出席が増えていることや、『Web開催のおかげで初めて株主総会というものに参加しました』というアンケート回答もいただきましたので、リアルとオンラインの良い点をバランスよく取り入れながら、株主のみなさまにご満足いただける株主総会を今後も開催していこうと思います。」
常に最新を追い求めていくユーグレナ社であるが、一方で、全ての株主が求めるものを追求し続ける薗田の姿勢は、まさに「自分たちの幸せが誰かの幸せと共存している状態」を目指すユーグレナ社のフィロソフィーを体現している。
2022年9月掲出
登場人物
- 管理部
euglee課薗田 玲子 -
2014年1月入社。
通販部門、情報システム部門を経て、2020年5月よりeuglee課。
仲間のエンゲージメント向上を目指し、「ユーグレナ・グループらしさ」を育てる毎日です。
euglena Projects
vol.00
バングラデシュの子どもたちを
救う素材を探せ。
vol.01
誰もなし得ていない、ユーグレナの
屋外大量培養技術を確立せよ。
vol.02
ユーグレナを
300億円市場に育て上げよ。
vol.03
バングラデシュの
全ての小学校に給食を。
vol.04
煙突から排出されるCO2で
ユーグレナを培養せよ。
vol.05
ユーグレナの化粧品事業を
立ち上げよ。
vol.06
日本初のバイオジェット燃料
製造プラントを建設せよ。
vol.07
「ミドリムシ」の名前を
武器にせよ。
vol.08
中国にユーグレナを
普及せよ。
vol.09
スーパーユーグレナを
獲得せよ。
vol.10
バングラデシュの
貧困問題を
緑豆事業で解決せよ。
vol.11
ユーグレナでタケダと
新商品を開発せよ。
vol.12
下水処理場の下水を活用し、
ユーグレナを培養せよ。
vol.13
ユーグレナの仲間の
「行動指針」を作成せよ。
vol.14
日本独自の技術で、
ユーグレナを培養せよ。
vol.15
仲間がより働きやすい
オフィスを追求せよ。
vol.16
ゆーぐりん保育園を
オフィスに併設せよ。
vol.17
ユーグレナで石垣島の
地域活性化に貢献せよ。
vol.18
ユーグレナの認知度を上げる
新商品を共同開発せよ
vol.19
ユーグレナのカフェを
石垣島で開店せよ。
vol.20
ユーグレナを飼料にして
比内地鶏を育成せよ。
vol.21
ユーグレナ入りディーゼル燃料を
いすゞ自動車と共同で実用化せよ。
vol.22
ユーグレナを使った
バイオ燃料を生産せよ。
vol.23
研究系ベンチャーを
ヒト、モノ、カネで支える
新しいファンドを確立せよ。
©2018 MELTIN MMI
vol.24
ユーグレナとクロレラで世界初の
ASC-MSC藻類認証を取得せよ。
vol.25
グループ企業との
シナジーを構築せよ。
vol.26
新しい仲間と、
遺伝子レベルで人を健康にせよ。
vol.27
自由が丘と
ユーグレナを普及せよ。
vol.28
ユーグレナサプリメントの
加工工場を立ち上げよ。
vol.29
理科のチカラで石垣島の
地域活性に貢献せよ。
vol.30
新しいユーグレナの
基幹化粧品を開発せよ。
vol.31
ロヒンギャ難民の
食料問題解決に貢献せよ。
vol.32
ユーグレナ由来の美容成分を
研究解明せよ。
vol.33
学生のチャレンジを応援!
通年採用を開始せよ。
vol.34
ユーグレナとクロレラで
ハラール認証を取得せよ。
vol.35
健康寿命を伸ばすユーグレナの
可能性を発見せよ。
vol.36
竹富島のクルマエビ養殖事業を
発展させよ。
vol.37
「G20軽井沢」にてユーグレナバイオディーゼル燃料で自動車を走らせよ。
vol.38
石垣島ユーグレナの魅力を伝えるキャラクターを企画せよ。
vol.39
CFO(最高未来責任者)を募集・選考せよ。
vol.40
国産カラハリスイカを
栽培せよ。
vol.41
日本初となる「バーチャルオンリー
株主総会」を開催せよ。
vol.42
次世代バイオディーゼル燃料を
普及させよ。
vol.43
コーポレート・
アイデンティティを刷新せよ。
vol.44
石垣島生まれの
ユーグレナを浸透させよ。
vol.45
ユーグレナ由来の
肥料研究を加速させよ。
vol.46
日本の空をバイオ燃料で
クリーンにせよ。
vol.47
オフィス環境を改善し、
仲間の生産性を向上させよ。
vol.48
化粧品における
サステナビリティを追求せよ
vol.49
次の新素材「ミドリ麹」の
価値を世に拡げよ。
vol.50
ユーグレナの
ESG経営を加速させよ
vol.51
未来世代アドバイザリーボードを
設置せよ。