euglena Project

40

国産カラハリスイカを
栽培せよ。

奇跡のスイカの国内栽培と商品化に向けた挑戦

2013.09 –

継続中

カラハリスイカに魅了された研究者たち

「この植物はとんでもない可能性を秘めている」

2010年当時、大学院に在籍していた小川は、砂漠緑化研究の一環として研究室に取り寄せられていたカラハリスイカに知れば知るほど魅了されていった。

カラハリスイカとは、アフリカ南部のカラハリ砂漠を原産地とするスイカの一種で、東京の2倍の紫外線が降り注ぐと言われる厳しい環境でみずみずしく生きるため、「奇跡のスイカ」とも呼ばれている。果実全体の約97%が水分で、保水力に優れ、極めて腐りにくく乾きにくいという特質を持つ、まさに奇跡の植物だ。

カラハリ砂漠は多量の紫外線が降り注ぎ、年間降雨量は250mm~500mmと極度な乾燥地帯。加えて、夏季では日中の最高気温が40℃近くになる一方で、冬季は寒く、2℃まで気温が下がることもある過酷な環境。
このような環境下でも繁殖できる貴重な食糧として重宝され、砂漠で暮らす人々や野生動物など多くの生命に潤いを与えている。これまでの研究やスイカを生薬として活用する古来の知見に基づいて、潤いのほかにも、『身体の水分や血の巡りを良くする』『炎症などの身体の酸化障害を防ぐ』といった効果があると考えられている。またカラハリスイカには「シトルリン」という血管を拡張する成分が含まれていることも分かっている。

こうしたカラハリスカの特質を踏まえると、熱中症対策や身体の循環機能の改善などにも有効なのではないかと小川は考えた。

「熱中症を引き起こす要因は脱水症状に加えて、熱が体にこもってしまうこと。その対策としては血流を改善し、体の中の熱を外に放出しやすくする必要がある。加えて、熱中症では活性酸素が体内で増加することも報告されている。カラハリスイカは抗酸化作用を持つことも明らかになっており、ありとあらゆる病気に関連すると指摘されている酸化ストレスを軽減することで、病気の予防にも大きな役割を果たすのではないか」

その後、植物バイオサイエンスの博士号を取得した小川は、研究の専門領域をカラハリスイカに定め、カラハリスイカの研究に没頭していた。ユーグレナ社の鈴木健吾(執行役員 研究開発担当)が小川の所属する研究室を訪問したのはちょうどその頃だった。鈴木もまた、植物関連の学会などでカラハリスイカの存在を知り、その可能性に魅了された研究者の一人だった。

カラハリ砂漠(ボツワナ)のカラハリスイカ

「カラハリスイカを
もっと広めていきましょうよ」
企業へ飛び込むことを決意させた言葉

小川と鈴木は同じ研究者として「人々に役立つ研究がしたい」という共通の思いを持ち、カラハリスイカの共同研究を進めるようになった。3年間の共同研究の末に小川は鈴木から「ユーグレナ社でさらに専門的に研究してもらえないか」という誘いを受けることとなる。

カラハリスイカがどれだけ可能性のある素材でも、その魅力は世間ではほとんど知られていない。その魅力が認識されない限り、積極的に取り扱おうとする企業は増えないだろう。そのような状況を覆すために、鈴木は「カラハリスイカを一緒に世の中に広めていきましょうよ」と前向きに小川に語りかけたのだった。

「当時、研究者として大学の研究室にこもる日々の中で『自分の研究は本当に世の中に貢献できているのだろうか?』というモヤモヤが大きくなっていた。研究成果が誰かの人生に良い影響をもたらす場面を間近で見たい。そんな思いでユーグレナ社への入社を決意した」

ユーグレナ社が研究開発を行っている「ユーグレナ」「クロレラ」「ミドリ麹」といった藻類や藻類関連の素材と比べると、「カラハリスイカ」はスイカの一種であり、異質と言える存在かもしれない。
それでも小川は「カラハリスイカも、他の素材と同様に人と地球を健康にできるはず」と信じて、カラハリスイカをユーグレナ社の「次世代素材」として確立すべく動き始めたのであった。

左から、鈴木と小川

温暖な環境で旺盛に育つ一方、
砂漠にはない「大雨」が
不作の原因となることも

まず、大きな問題はアフリカ原産のカラハリスイカを、日本で安定的に栽培することであった。カラハリ砂漠外で行う国産カラハリスイカの栽培は、全てが初めての工程の連続だった。

元々が野生種の植物であるため、はじめは苗を作って農地に植えるノウハウさえもなかった。国内の提携農家や農業協同組合と協力してカラハリスイカの栽培を開始してからも、葉が大きく育っているのに果実ができないなど、さまざまな課題に直面してきた。

中でも、特に苦労したのは「雨」の問題だ。明確に雨季と乾季が分かれる砂漠原産のカラハリスイカは、『雨季に成長し、乾季に果実を作り、再び雨季が訪れると実を腐らせて種を放出する』というサイクルを繰り返す。年間を通して雨が多い日本は生育環境として相性が合わず、栽培に悪影響をもたらしてしまう。大雨によって不作になることも多く、果実の収穫量をコントロールするのは容易ではない。

一方で、小川はカラハリスイカの生命力、成長力に目を見張ることもあった。
「栽培している隣の畑などに襲い掛かるような勢いでツルが伸び、農家さんのビニールハウスを突き抜けて、果実の大部分がハウス外で成長していたこともあった」と話す。
カラハリスイカは、国内では一般的な国産スイカの数倍の体積で成長することもある。

カラハリスイカの葉の成長期(奈良県御所市)

カラハリスイカの可能性

幾度とない失敗を重ねながら、小川は提携農家や農業協同組合とともに試行錯誤を重ねて遂に国産カラハリスイカの栽培を軌道に乗せた。現在は奈良県と千葉県で毎年収穫できるようになり、カラハリスイカを活用した商品化も徐々に進んでいる。

発達初期のカラハリスイカ果実

小川は現在、ユーグレナ社の営業部門に所属してカラハリスイカのセールスやPRを担当している。植物バイオサイエンスの博士号を持つ研究者であるにも関わらず、自ら営業部門への異動を希望した。

「当初は、研究担当としてカラハリスイカの魅力を語るために営業サポートなどを行っていたが、『もっとダイレクトに伝えていきたい』と思うようになった。営業も研究に通じるところがある。実際にお客さまを訪問して、そこで需要を調査すると、「こんな植物とカラハリスイカを組み合わせた新しい商品を開発できれば需要に応えられそうだ、またこんな研究をしていったほうがもっと価値を感じてもらえそうだ』といった新しいアイディアが浮かんでくる」

研究者として1000人規模のウェビナーに出演する小川(右)

またまだ知名度の低い「カラハリスイカ」という素材。しかし小川は誰よりもその可能性を信じて奔走している。原動力は、今もなお変わらない「カラハリスイカ愛」だ。

「人と動物の健康と美容に役立つ商品をたくさん開発し、多くの方々にご愛用いただきたい。カラハリスイカの機能は、まだ一部しか解明されておらず、さらなる研究を進めていきたい。そしてカラハリスイカは見た目も実に可愛らしく、それを表現してあげられるように、商品のパッケージングや外観にもこだわっていきたい」

展示会でカラハリスイカを説明する小川

小川の行動が、カラハリスイカの可能性を世に広めるトリガーとなっていく。
カラハリスイカの力で人と地球を健康にし、Sustainability First(サステナビリティ ファースト)な世界づくりのため、挑戦は続く。

2021年2月掲出



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euglena Data

~砂漠の宝玉 カラハリスイカ~

カラハリスイカの研究レポートはこちら

登場人物

営業部
素材・海外営業二課
小川 太郎

2016年4月入社
機能性研究課にて素材の研究開発やグループ間の研究推進事業等を担当。2018年10月より営業、OEM製品企画、カラハリスイカの素材ブランディングに携わる。

「植物学者の見地からもカラハリスイカは謎が多くワイルドな生物です。食べても、育てても、触れても、研究しても、まさに驚きの連続です。この子は本当に凄いですよ、みなさんもご一緒にいかがですか?」

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vol.22

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vol.23

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©2018 MELTIN MMI

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vol.28

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