最貧国と言われるバングラデシュ共和国。
そのバングラデシュにユーグレナ社メンバーが訪問し、感じたことをお伝えするレポート第4弾です。そして今回がとうとう最終回となります。
前回のレポートでは、「黄金のベンガル」と呼ばれるポトアカリで、もやしのもととなる緑豆を栽培する現地農家を訪問しました。今回はポドアカリから首都ダッカに戻り、バングラデシュの子どもたちとの交流の様子をレポートします。
※2019年4月25~28日の3泊4日の企業研修訪問記です。
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隣接する高級住宅街とスラム地区
朝6時。
「ゴゴン!」という船の揺れに起こされますが、2泊目となると慣れたもの。
田園地帯であるポドアカリから出発した船は、喧噪の首都ダッカに到着しました。
早朝にも関わらず混雑するダッカの街を通り抜け、高級住宅街であり官庁街のグルシャン地区のホテルに到着。シャワーを浴びて、朝食を取り、最終日の準備を整えます。
グルシャン地区はダッカでも有数の高級住宅街かつ官庁街で、東京の中心部より高い家賃の部屋もあるという、バングラデシュでは特殊な地区です。
そんな高級住宅街から出発した私たちは、ユーグレナ入りクッキーを配布する「GENKIプログラム」※に参加する小学校へ向かいました。
※GENKIプログラム:豊富な栄養素を持つユーグレナ入りクッキーを、バングラデシュの子どもたちに無償で配布するプログラム。ユーグレナ社およびユーグレナ・グループ各社の全商品ならびにパートナー企業の指定商品の売上の一部でユーグレナ入りクッキーをつくり、バングラデシュの子どもたちに配布しています。
住宅街、といっても舗装されていない土の道の両脇に、住宅が広がっているという地域を進んでいく途中、スラムといってもいいような地域を通り抜けました。
この地域では、ドアのない約2畳分のスペースに家族で暮らしている家庭もあると現地スタッフが教えてくれました。
高級住宅街から車で20分ほどの距離で、ここまで生活環境が違うことに驚く一行。
GENKIプログラムの対象は栄養問題を抱えている子どもたちですが、その子どもたちの生活環境を垣間見た瞬間でした。
ユーグレナ入りクッキーを手渡しできた
さらに道を進むと小学校が見えてきました。
校舎のカラーリングは日本では見ないような明るい色です。
バングラデシュでは、自治体やNGO・NPO、そして地域住民たちが運営する学校とさまざまな主体が学校を運営しています。
日本の公立や私立の学校とはちょっと違った感覚です。この日、最初に訪問したのはNPOが運営する学校です。
小学校に着くと先生たちが、これまでに配布したクッキーの数を記憶しているノートを見せてくれました。
毎日、何人にクッキーを配ったのかを手書きで管理しているとのことですが、日によって配布したクッキーの数が変動しています。
日本の学校では、毎日全員の子どもたちが登校してくるのが普通ですが、バングラデシュの学校では、それが当たり前ではない。子どもたちが学校に来られない原因は、家庭環境だったり、健康状態だったりさまざま…とのこと。 学校に毎日行くのが当たり前、という日本人の感覚はここでは通用しません。教育の前提にはさまざまな環境整備が必要なのだと痛感した瞬間でした。
先生たちから話を聞いている間も、窓から子どもたちがこちらを覗き込んでいました。
今回の研修で知りましたがが、バングラデシュ人はみな好奇心旺盛!そして子どもたちの私たちに対する興味の強さはひとしおです。
先生に怒られてもめげずに「握手して!」と話しかけてきます。
カメラを向けると笑顔でにっこり。私たちと一緒に写真を取ろうと声をかけてきます。スマートフォンやカメラで写真を見せてあげると大喜び。
先生たちとの会話を切り上げて教室に移動します。15人くらいの子どもたちのいる教室に入ると、子どもたちはちょっと緊張した様子。
「GENKIプログラムを運営しているユーグレナ社から来ました」と自己紹介をして、当日の配布分のクッキーを配りました。クッキーを渡すときに子どもたちは、はにかんで「Thank you」と言ってくれました。
いきなり来た外国人に少し戸惑っている様子なので、「どんな教科が好きですか?」、「放課後は何をして遊びますか?」などいくつか質問をさせてもらいました。みんな少し照れながらも元気に答えてくれます。
そして「ユーグレナ入りクッキーは好きですか?」という質問には「大好きー!」と大声で答えてくれました。
そして最後は子どもたちと写真撮影。
教室からたくさんの子どもたちが運動場に集まってくれました。
全員がGENKIプログラムのクッキーを食べてくれていることを実感し、GENKIプログラムの意義と現地スタッフの努力をあらためて感じました。
男の子は片足の押し相撲、女の子は椅子取りゲーム
名残惜しいですが、子どもたちに別れを告げ、車でもう1つの小学校へ移動します。次の小学校は地域の自治会が運営する学校です。直前に訪問した小学校よりも運動場が広くて、子どもたちの人数も多いとのこと。
ここでも先生の説明を受けた後、クッキーの配布を手伝わせていただきました。そして、子どもたちに何か質問はありませんか?と聞くと、「何か日本の歌を歌ってほしい」とのリクエスト。
私たち参加者全員が歌える歌ということで、慌てながら考えた結果、どうにかみんなが歌える歌ということで「君が代」を歌いました。なんだかスポーツの日本代表になったような気分です。
教室を出ると、先生たちが「普段、子どもたちが何で遊んでいるのかを見ていってほしい」と言ってくれました。男の子たちが片足での押し相撲、女の子たちは椅子取りゲーム。日本の小学生と同じようにみんなとっても楽しそう。どこでも体を使った遊びは万国共通なのだなと実感しました。
最後に、こちらでも子どもたちと集合写真を撮影しました。この学校では先生たちも写真が大好きで一緒に自撮り(セルフィー)してくださいとお願いされます。写真好きは子どもだけでなくバングラデシュ人の性格なのだと理解。
グラミンユーグレナを訪ね、ムハマド・ユヌス博士の軌跡たどる
子どもたちが力いっぱい手を振って見送ってくれた後は、ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス博士が率いるグラミングループの本部ビルに移動しました。
同じビルにはグラミングループとユーグレナ社が設立したグラミンユーグレナのオフィスも入っています。ここでバングラデシュのユーグリー(ユーグレナグループの仲間を指す社内用語)たちと会うことができました。
入社以来、メールのやり取りだけで、なかなか直接話す機会がなかったので、仲間の顔を見て話すことができたのは嬉しい時間でした。
また、グラミングループの複数の要職に就き、グラミンユーグレナの役員も務めるバリさんにグラミングループとグラミンユーグレナの歴史についてお話いただきました。その中で、バングラデシュ事業に携わっているユーグレナ社の日本人スタッフに対して「彼はリアルビジネスを知っているタフガイだ」というような言葉もあり、自分のことのように誇らしくくすぐったく思いました。
そして、研修の最後は、グラミングループの本部ビル1階にあるムハマド・ユヌス記念館を見学です。この記念館はマイクロ・ファイナンスの普及によってノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス博士の生涯とその功績を紹介する記念館です。
ユヌス博士の軌跡を辿っていくうちに、ふと不思議な気持ちになりました。なぜかというと、当社の社長出雲も、ユヌス博士がいなければ会社を立ち上げることはなかったはずで、もしそうだとしたら私もこうしてバングラデシュにくることもなかったという風に考えたから…1人の思いが世界に広まり、多くの人の人生を変えていく。そして、私もその一員であったということを再認識して研修の全行程は終了しました。
研修工程が終了した後はバングラデシュの伝統衣装のパンジャビを購入したり、地元のスーパーマーケットを覗いたり、ダッカにある日本食料理屋で打ち上げをしたりと観光をして、バングラデシュとの別れを惜しみました。
そして深夜2時、到着したときと同じくクラクションの爆音が響くダッカ空港から、飛行機で東京に飛び立ちました。あっという間の3泊4日!でした。
最後に
「インドに行くと人生観が変わる」。
そんな話を聞いたことがありますが、バングラデシュに訪問した私は感じています、『バングラデシュに行って人生観が変わった!!』と。
これまで漠然と捉えていた社会課題と自分の間にある距離の遠さを痛感しました。これまで本やニュースでしか知りえなかった栄養問題、途上国の農村の暮らしの厳しさなどの社会課題が初めて手に触れられる距離にあり、ソーシャルビジネスの最前線で働く仲間の姿など、その全てが日本にいたら知ることのできなかった事柄でした。
そして、現地の課題の大きさや深さを知りました。あまりに複雑に絡み合い、巨大な社会問題の姿に、自分ができることの小ささに打ちのめされもしました。
同時に研修に同行してくれたバングラデシュ事業を担当するメンバーの言葉が、私の心に刺さりました。
「僕たちは微力かもしれないが、決して無力ではない」
GENKIプログラムのユーグレナ入りクッキーは、栄養問題を根本から解決する魔法の食べ物ではありません。しかし2014年から5年間、地道に続けてきているこのプログラムは今では毎日1万枚を配るまでに拡大し、少しずつバングラデシュの子どもたちの栄養問題の解決に貢献しています。
また、緑豆プロジェクトも農村地域の生活水準を激変させることはできていません。ですが8千人超の契約農家に対してこれまでになかった収入アップの機会を与え、日本のもやし会社には新しい産地からの緑豆を提供しています。
そして、これらの努力を継続してきたことが、日本企業として初のWFPとの提携につながっています。
今回の研修ツアーメンバーは、バングラデシュに関する事業に直接携わってはいませんが、目の前の仕事の一つひとつがあのダッカの小学生たちの笑顔に、灼熱の大地で奮闘する仲間へのエールに繋がっていると信じられるようになったのではないかと思っています。
私たちユーグレナは事業が拡大すればするほど、社会課題が解決していくことを目指しています。社会課題は多様に存在しますが、これからも少しずつでも解決を目指して日々取り組んでいきたいと思います。
#バングラデシュ #SDGs #食料問題