ユーグレナ社のチーフクリエイティブディレクター加藤智啓が目指すのは、社会問題と向き合い自ら行動できる人を増やす事。2025年1月に登場した「ユーグレナカード」のデザインに込められた想いと、ユーグレナ社ならではの特徴を生かしたデザインの手法について語ります。

多角的な事業をデザインでつなぐ「チーフクリエイティブディレクター」の役割

―2023年7月、ユーグレナ社のチーフクリエイティブディレクターに就任されました。改めてその役割についてお聞かせください。

加藤:ユーグレナ社が展開する事業は、一般的には異なる会社として分けられてもおかしくないほど多様性があります。その中で求められることの一つが、まったく異なる事業間でシナジーを生み出し、お互いのエネルギーを無駄なく活かすこと。そこにデザインの力を応用し、社会から必要とされる存在となるように各事業を支えていくことが私の役目だと考えています。

企業におけるデザインは、案件ごとデザイナーや担当者が入れ替わることも多いのですが、企業全体の思想や特性、理想像と実像を深く理解したうえで、各事業や各媒体の垣根を問わず臨機応変に対応できる存在が大切だと感じています。全体像を理解し、未来の展望を描けているからこそ、現実を理想に近づける事ができる。それこそが、「人と地球を健康にする」という高い志のもとに多角的な事業を展開しているユーグレナ社にとって、必要な役割だと考えています。

加藤が中心となりデザインを手がけたユーグレナ社の基幹ブランド『からだにユーグレナ』シリーズ

参考:サステナブルタイムズ:基幹ブランド「からだにユーグレナ」が新たなステージへ!4年ぶりのリブランディングにより、Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)を真正面から体現したデザインに進化。新タグライン「地球健康食」、スローガン「めぐれ!健康」に込めた想いとは?

―具体的には、どのように各事業に関わり、サポートされているのでしょうか?

加藤:何よりも、できるだけ多くの方々と関わりながら一緒に仕事をすることを意識しています。プロジェクトの直接の担当者でなくても、社内のさまざまな立場の方々と積極的にコミュニケーションを取ることによって、いまの会社の状況がリアルに見えてきます。商品デザインの場だけでなく、基礎となる藻類の生産現場を理解するために、石垣島の現場の仲間や各協業先の方々とも交流を深めてきました。

デザイナー目線から見たユーグレナ社とは

―就任から1年半が経過しましたが、デザインの力を通じて会社にどのような変化があったと感じていますか?

加藤:ユーグレナ社は、日々大きな変革が起こる会社です。最適解を求めて、方針や戦略が変わる中、当初思い描いていたビジョン通りには進んでいない部分はあります。しかし、複数の商品デザインや看板的な事業に関わりながら、“藻活”など世間に新たな風を巻き起こせるようなプロジェクトの創生にも取り組んでいます。マネジメントチームと試行錯誤しながら、ムーブメントを起こす準備を一緒に進めています。

―デザイナーから見たユーグレナ社の特徴/魅力はどんなところでしょうか?

加藤:サイエンスに精通した科学者たちが社内に多くいることが非常にユニークで、会社の風土に大きく影響を与えていると感じています。私は『潜在能力』を引き出すデザインを心がけており、関わる「人」や「素材」の持つ多様な魅力を最大限に活かせることが、よい結果につながると考えています。ほかの会社とは違うユニークな組織構造が、会社の魅力の一つだと思いますね。

2025年1月に登場した「ユーグレナカード」に込めた想い

―誰かのしあわせにつながることを目指して、丸井グループのフィンテック事業を担うエポスカードとのコラボレーションによって生まれたユーグレナカードですが 、デザインに込めた想いについて教えてください。

加藤:クレジットカードをデザインすることは、私にとって初めての経験でした。このユーグレナカードは、“活用度合いに比例して、社会問題の縮小へ繋がる”という特長があります。

ユーグレナ社の祖業である微細藻類ユーグレナ(和名: ミドリムシ)の持つ歴史的な背景(未来に危惧されている食糧難などの社会問題の解決策として、数々の国際的な機関でも研究されてきた)とリンクしている事と、ユーグレナ社の事業特性そのものでもあるという気づきから着想を得て、構想を進めました。
そのため、ミドリムシを中央に配置し、顕微鏡のレンズから研究者が覗いた際の視界を再現しています。

周囲の緑色は、常葉樹の葉のような深緑「常磐緑色」に、空や海を連想される「空色」を混ぜたコーポレートカラーの「サステナブル・グリーン」を取りいれ、既存のクレジットカードとは異なる佇まいとなるように設計しました。
店頭などでカードを使うときに、目に飛び込んでくる躍動的なミドリムシのビジュアルからコミュニケーションのきっかけが生まれることを期待しています。

また、将来的にはAR技術(現実世界にデジタル情報を重ねて表示する技術)を活用し、スマホとカードを連動させ、カードを使うことによって貯まるポイントを楽しく確認したり、どれだけ社会に貢献しているのかを可視化できる仕組みを取り入れる構想も練っているため、その時にも活かせるデザインを目指しました。

将来のAR構想について実演する加藤

―ユーグレナ社らしいインパクトのあるデザインですが、このデザインは最初から浮かんでいたのですか?

加藤:ミドリムシを主軸にしたいという構想に関しては、初期段階からありました。そのうえで、クレジットカードが使われる様々なシーンを想定し、どうしたらより多くの人に親しんでもらえるかを考えました。このカードが、ミドリムシを知るきっかけとなり、持つことで会話が生まれ、さらには社会貢献にも接続できるという事に重点を置き、このデザインが完成しました。

―最後に、カードを使う皆さまへのメッセージをお願いします。

加藤:「どうせお会計をするなら、このカードで決済した方がいいよね」と思ってもらえるようなカードを目指しています。お買い物が単なる消費ではなく、同時に誰かの役に立つことができる行為へと変換されていけば、「Sustainability First」な環境が至る所で感じられるようになると思います。寄付をしたいけれどもなかなかきっかけがなく実行できない人も多いと思いますが、このカードがその一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいです。

ユーグレナカードの詳しいご案内はこちらから:
ユーグレナカード|年会費無料のクレジットカードはエポスカード

丸井グループの記事はこちらから:
「気がついたらサステナブル」に貢献している社会へ│Partner’s Interview #7 ユーグレナ
この指とーまれ!

【加藤智啓(かとう ともひろ)プロフィール】
ユーグレナ社チーフクリエイティブディレクター/デザイナー
株式会社エディングポスト 代表取締役
株式会社メソッド 取締役
株式会社エーゼログループ CDO
株式会社嗜好品研究所 CDO

2007年、クリエイティブスタジオEDING:POST(エディングポスト)を文化服装学院在学中に創業。手がける領域に制限はなく、穀物・青果・衣類などの生活必需品、お酒・花火・入浴剤などの嗜好品から、教育・医療に至るまで、業界・業種の垣根を越境し、それぞれの目的に合わせて最適な手段を設計。事業構築におけるブランディングとデザインを根幹からサポートする。グッドデザイン賞BEST100、日本空間デザイン賞 金賞、日本パッケージデザイン大賞 銀賞、iF DESIGN AWARD(ドイツ)など受賞多数。