汗をかく力は、3歳頃までの過ごし方で決まると言われています。生まれて間もないころの汗腺は汗を出す能力が未熟で、汗をかく経験を積むことで汗腺が能動化され、汗をかきやすくなるからです。しかし、汗を作る汗腺の数そのものは生涯変わりません。汗腺の数は、約300万〜500万個と個人差があり、汗をかきやすいかどうかは環境と遺伝の両方の影響を受けることが分かっています。
ユーグレナ社では、ユーグレナ・マイヘルスとジーンクエストの遺伝子解析サービスのゲノムデータをもとに、たくさん汗をかく体質かどうかについての遺伝子項目を解析し、「汗をかきやすい遺伝子タイプが多い都道府県ランキング」を2024年6月に公開しました。

■汗について

汗は全身にある汗腺で作られ、皮膚の表面に送り出されます。汗腺には「エクリン腺」「アポクリン腺」の2種類があり、それぞれ発汗の仕組みや性質が異なります。

エクリン腺は、ほぼ全身の皮膚に存在し、暑い時や熱がある時、運動をしている時など、主に体温調節のシーンで活躍します。汗腺の開き方が急激で、汗の粒子が細かいため、いわゆる「サラサラとした水っぽい汗」です。

一方で、アポクリン腺は、脇の下や下腹部など限られた部位に存在し、汗腺がじわじわと開き、ダラダラと流れることが多く、アポクリン腺からでる汗は脂質やタンパク質などの成分を含み、白く濁っています。いわゆる「ベタベタした油っぽい汗」です。

汗をかく要因としては、「体温調節」「精神的緊張」「味覚刺激」の3つがあり、発汗する汗腺にも違いがあります。

  • 体温調節:暑い時や熱がある時、運動をした時など。エクリン腺から発汗。
  • 精神的緊張:ストレスや興奮、緊張をした時など。エクリン腺、アポクリン線から発汗。冷や汗。うそ発見器にも用いられる。
  • 味覚刺激:辛い物、刺激物を食べた時など。エクリン腺から発汗。額や頭皮、顔面に汗をかくのが特徴。

このうち、熱中症と係わりが大きいのが「体温調整」です。人は汗を出すことで体温を調節しますが、体が暑さに慣れていない時期、体調が悪い時など、体温調節機能が弱っている時は、うまく機能せず、熱中症のリスクが高まります。

■遺伝子解析項目「汗のかきやすさ(SNP:rs10192375)」について

2018年、東京女子医科大学らの研究グループにより、11,000人以上の日本人女性を対象に、皮膚に関する複数の体質についてのアンケート調査結果と遺伝子情報を用いて、その関連を調査する研究が行われました。その結果、「SNP:rs10192375」という遺伝子型において「G」を持っているほど、汗をかきやすい傾向があることが分かりました。

遺伝子解析項目「汗のかきやすさ(SNP:rs10192375)」には、次の3つの遺伝子型があります。

  • 汗をかきやすいタイプ(遺伝子型:GG)
  • 一般的なタイプ(遺伝子型:AG)
  • 汗をかきにくいタイプ(遺伝子型:AA)

■「汗をかきやすい遺伝子タイプ」が多い都道府県ランキング

今回の調査では、「汗をかきやすいタイプ(遺伝子型:GG)」に該当する人の割合を都道府県(出生地)別に算出し、数値化しました。

ゲノムデータの解析による、汗をかきやすい遺伝子タイプの人の割合が相対的に高い都道府県は、1位 秋田県、2位 沖縄県、3位 山形県、4位 島根県、5位 福井県、6位 岐阜県、7位 熊本県、8位 山口県、9位 鳥取県、10位 愛知県となりました。1位の秋田県(24.83%)と47位の香川県(15.07%)では、約10%の差がありました。

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■日本人の約2割が汗っかきで、世界の地域別では気温が高い地域の方が汗っかきの傾向に

今回の調査で遺伝子解析項目「汗のかきやすさ(SNP:rs10192375)」に対して、日本人における遺伝子型の割合は、

  • 汗をかきやすいタイプ(遺伝子型:GG)・・・20.6%
  • 一般的なタイプ(遺伝子型:AG)・・・49.4%
  • 汗をかきにくいタイプ(遺伝子型:AA)・・・30.0%

でした。

また、世界の地域別(人種別)では、「汗をかきやすいタイプ(遺伝子型:GG)」に該当する割合が高い順に、アフリカ集団(29.9%)、ヨーロッパ集団(22.6%)、ラテンアメリカ集団(20.4%)、アジア集団(18.7%)となりました。気温が高い地域のアフリカ集団は、日本人を含むアジア集団と比べると10%以上の差があり、汗をかきやすい遺伝子タイプが多いということが分かりました。

汗をかきやすい遺伝子タイプに該当する人だけでなく、普段から汗をかきやすい人は特に積極的な水分補給を心がけてください。

【調査概要】
調査方法:ゲノムデータの解析をもとに調査
調査対象:「ユーグレナ・マイヘルス 遺伝子解析サービス」、「ジーンクエストALL」の利用者
対象者数:ゲノムデータ:57,449人
調査時期:2024年5月
調査項目:ゲノムデータ「汗のかきやすさ(SNP:rs10192375)」を調査し、「汗をかきやすいタイプ(遺伝子型:GG)」に該当する人の割合を都道府県ごとに算出

【ユーグレナ・マイヘルス 遺伝子解析サービスとは】
個人の健康リスク・体質の遺伝的傾向・祖先のルーツについて350項目以上の遺伝子型を解析するサービスです。太りやすさなどの体質や、がん・糖尿病などの病気発症リスクに関する遺伝子情報、病気の予防のためにあなたができることをチェックできます。また、体質や病気の発症は遺伝要因だけでなく、食生活や生活環境など環境要因も大きく影響を受けるため、自分の遺伝子情報を理解したうえで生活習慣を見直す際のヒントとなります。

遺伝子解析項目は定期的にアップデートしていて、2024年4月には、「恐怖の持続」の項目の新規追加を実施、同年5月には、「アトピー性皮膚炎」の項目を更新し、ポリジェニックスコア(PGS)を用いた、これまでより高い精度の解析結果を提供できるようになりました。詳しくはこちらをご覧ください。