「日本人は勤勉だ」というイメージを持っている人も少なくないでしょう。しかし、歴史的に見ると、どうやら「日本人」=「勤勉」というイメージは明治以降のものであると推測されているそうです。では、遺伝子的にはどうなのか?
ユーグレナ社では、ユーグレナ・マイヘルスとジーンクエストの遺伝子解析サービスのゲノムデータをもとに、目的意識が強く、最後まで根気をもって意思をつらぬく傾向である性格「勤勉性」に関わる遺伝子項目を解析し、「勤勉性が高めの遺伝子タイプが多い都道府県ランキング」を2024年1月に公開しました。

■育ってきた環境が違うから?性格が遺伝する確率は?

心理学において、人の性格の特徴を捉える研究理論のひとつにビッグファイブと呼ばれる『性格の5因子』理論があります。1990年代に提唱されたもので、性格の個人差を「情緒安定性」「外向性」「協調性」「開拓性」「勤勉性」の5つの因子で記述する考え方です。性格は、育てられ方や周りの人間関係など環境要因が多く影響していると考えられていますが、遺伝要因も関係していることが研究で明らかになってきており、30~60%ほどが遺伝要因であるという研究結果もあります。

■性格を表す因子「勤勉性」とは?

勤勉性は、統制性・信頼性とも称され、長期的な利益のために自身の衝動を抑制して勤勉に生きようとする性質を示します。

この傾向が高いと、自己統制が強く、勤勉であり、確固とした意志・目的をもって物事を遂行しようとしますが、行き過ぎると完璧主義に陥り自他を苦しめたり、失敗や挫折に落ち込んだりしやすい場合があります。

一方で、この傾向が低いと、衝動性が高くなり、極端な場合には根気がなかったり、浪費につながったりする場合もあると言われていますが、必要な時にすぐに決断ができることは変化の激しい環境において利点となります。

勤勉性が高いから良い、低いから悪いというわけではなく、それぞれにメリットとデメリットが存在しています。

■遺伝子解析項目「勤勉性(SNP:rs1501672)」について

カリフォルニア大学の研究グループによって、100万人以上の欧米集団から取得したBFIやNEO-FFIなどと呼ばれる性格診断のアンケート調査結果と遺伝子情報を用いて、その関連を調査する研究が行われました。性格診断の結果から性格の5因子(「情緒安定性」「外向性」「協調性」「開拓性」「勤勉性」)のスコアを計算して、5つの因子のスコアそれぞれについて関連する遺伝子型を調査した結果、さまざまな遺伝領域と性格が関連していることが明らかになり、「SNP:rs1501672」という遺伝子型で「T」を持っているほど勤勉性が高い傾向があると分かりました。

遺伝子解析項目「勤勉性(SNP:rs1501672)」には、次の3つの遺伝子型があります。

  • 勤勉性が高めのタイプ(遺伝子型:TT)
  • 一般的なタイプ(遺伝子型:CT)
  • 勤勉性が低めのタイプ(遺伝子型:CC)

■「勤勉性が高めの遺伝子タイプ」が多い都道府県ランキング

今回の調査では、「勤勉性が高めのタイプ(遺伝子型:TT)」に該当する人の割合を都道府県(出生地)別に算出し、数値化しました。

ゲノムデータの解析による、勤勉性が高めの遺伝子タイプの人の割合が相対的に高い都道府県は、1位 徳島県、2位 鹿児島県、3位 沖縄県、4位 香川県、5位 宮崎県、6位 山梨県、7位 茨城県、8位 高知県、9位 岐阜県、10位 富山県となりました。

【全ランキング結果はこちら】

■意外!?人種別で見ると遺伝的に日本人は勤勉性が低かった!

今回の調査で、「勤勉性が高めのタイプ(遺伝子型:TT)」に該当する日本人の割合は30.7%でした。

人種別では、「勤勉性が高めのタイプ(遺伝子型:TT)」に該当する割合が高い順に、ヨーロッパ集団(73.8%)、ラテンアメリカ集団(66.8%)、南アジア集団(64.6%)、アフリカ集団(61.3%)、アジア集団(31.4%)、東アジア集団(27.9%)で、欧米人の方が日本人よりも勤勉性が高めのタイプが多く、「日本人は勤勉だ」という一般的なイメージとは異なる結果となりました。

一方、「勤勉性が低めのタイプ(遺伝子型:CC)」に該当する割合は、ヨーロッパ集団やラテンアメリカ集団など欧米人が3%前後であるのに対して、日本人を含む東アジア集団やアジア集団は20%前後でした。

前述の通り、環境要因もあるため遺伝子だけで勤勉性を決めることはできませんが、ご自身のタイプが気になる方は、当社の「遺伝子解析サービス」を試してみてはいかがでしょうか。「勤勉性」だけでなく、性格の5因子に関するそれぞれの項目、「情緒安定性」、「外向性」、「協調性」、「開拓性」に関する結果も提供しています。

【調査概要】
調査方法:ゲノムデータの解析をもとに調査
調査対象:「ユーグレナ・マイヘルス 遺伝子解析サービス」、「ジーンクエストALL」の利用者
対象者数:ゲノムデータ:57,449人
調査時期:2023年12月
調査項目:ゲノムデータ「勤勉性(SNP:rs1501672)」の項目について、「勤勉性が高めのタイプ(遺伝子型:TT)」に該当する人の割合を都道府県ごとに算出

【ユーグレナ・マイヘルス 遺伝子解析サービスとは】
個人の健康リスク・体質の遺伝的傾向・祖先のルーツについて350項目以上の遺伝子型を解析するサービスです。太りやすさなどの体質や、がん・糖尿病などの病気発症リスクに関する遺伝子情報、病気の予防のためにあなたができることをチェックできます。また、体質や病気の発症は遺伝要因だけでなく、食生活や生活環境など環境要因も大きく影響を受けるため、自分の遺伝子情報を理解したうえで生活習慣を見直す際のヒントとなります。

遺伝子解析項目は定期的にアップデートしていて、2023年12月には、「脂質異常症(高LDLコレステロール血症)」と「脂質異常症(高トリグリセリド血症)」の2つの項目の新規追加・更新を実施し、ポリジェニックスコア(PGS)を用いた解析結果を提供できるようになりました。詳しくはこちらをご覧ください。