健康診断の時、中性脂肪の数値が気になる方もいらっしゃることでしょう。中性脂肪が高い原因は、脂質や糖質、アルコールの摂り過ぎなど食生活や運動不足といった生活習慣によるものが一般的ですが、遺伝的要因で中性脂肪の数値が高めに出る方もいらっしゃいます。

ユーグレナ社では、ユーグレナ・マイヘルスとジーンクエストの遺伝子解析サービスのゲノムデータをもとに、脂質代謝に関わる遺伝子の遺伝子多型と肥満傾向・体質の関係をみた遺伝子項目を解析し、「肥満型で中性脂肪が高い遺伝子タイプが多い都道府県ランキング」を2023年10月に公開しました。

■中性脂肪と肥満の関係

中性脂肪は体内にある脂肪の一種です。摂取された食物の中で、エネルギーとして使われなかった糖質や脂肪は、大部分が皮下脂肪として蓄えられます。そのほとんどが中性脂肪です。

中性脂肪(トリグリセリド)は全身の脂肪組織の主成分であり、エネルギーを貯蔵する役目を担っています。普段は肝臓・皮下・血液中に存在し、糖質が不足するなどした場合、必要に応じてエネルギー源として、また、生命維持のために消費、代謝されます。一方で、血液中の中性脂肪濃度が高いと、肥満症や脂肪肝になりやすいと言われています。

■遺伝子解析項目「ダイエット【脂質代謝】(SNP:rs651821)」について

脂質代謝に関与することが知られている遺伝子に「APOA5(アポリポタンパク質A5)」があります。浙江大学の研究チームが、高グリセリド血症との研究が広く行われている「APOA5」遺伝子に注目して、子どもの時期における肥満と関連があるのか調べました。700人以上の中国人の若者を対象に調査を行い、その結果、SNP:rs651821という遺伝子型において「C」を持っている人の方が、肥満または過体重の傾向があり、血液中のHDL(善玉)以外のコレステロール濃度や中性脂肪(トリグリセリド)濃度も高い傾向がある中と分かりました。

遺伝子解析項目「ダイエット【脂質代謝】(SNP:rs651821)」では、脂質代謝に関与する「APOA5」の遺伝子多型のひとつと、肥満・体質の傾向との関係を見ていて、次の3つの遺伝子型があります。

  • 標準型に多いタイプ(遺伝子型:TT)
  • 肥満型に多く血中脂質濃度が高いタイプ(遺伝子型:CT)
  • 肥満型に多く血中脂質濃度が高いタイプ(遺伝子型:CC)

■「肥満型で中性脂肪が高い遺伝子タイプ」が多い都道府県ランキング

今回の調査では、「肥満型に多く血中脂質濃度が高いタイプ」である「CT」と「CC」の遺伝子型を「肥満型で中性脂肪が高い遺伝子タイプ」とし、この遺伝子タイプに該当する人の割合を都道府県(出生地)別に算出し、数値化しました。

ゲノムデータの解析結果による、肥満型で中性脂肪が高い遺伝子タイプの人の割合が相対的に高い都道府県は、1位 沖縄県、2位 佐賀県、3位 鹿児島県、4位 秋田県、5位 島根県、6位 福島県、7位 宮城県、8位 山形県、9位 宮崎県、10位 新潟県となり、九州や東北各県が上位に入りました。

【全ランキング結果はこちら】

■縄文人由来の遺伝子多型を多く持つタイプが多い九州や東北各県が上位に

東京大学の研究チームが2023年2月にアメリカの科学誌「アイサイエンス(iScience)」のオンライン版で発表した研究論文では、縄文人由来の遺伝子多型を多く持っている、つまり「縄文度」が高い地域として、一番高いのは沖縄県で、次いで東北各県や九州では鹿児島県、中国地方では島根県と報告されています。これは当社の今回の調査による「肥満型で中性脂肪が高い遺伝子タイプが多い都道府県ランキング」の上位に入った地域と非常に似ていることが見て取れます。

なお、縄文人由来の遺伝子多型である「血糖値および中性脂肪を高める」遺伝的因子は、現代の日本人にとっては肥満の要因となるものの、縄文人にとっては、血糖値や中性脂肪を高く維持することで常に食料を入手できるわけではない狩猟採集生活に適応していた可能性があると考えられています。

■日本人の約6割が「肥満型で中性脂肪が高い遺伝子タイプ」に該当

今回の調査で遺伝子解析項目「ダイエット【脂質代謝】(SNP:rs651821)」に関して、日本人における遺伝子型の割合は、

  • 標準型に多いタイプ(遺伝子型:TT)・・・42.6%
  • 肥満型に多く血中脂質濃度が高いタイプ(遺伝子型:CT)・・・45.6%
  • 肥満型に多く血中脂質濃度が高いタイプ(遺伝子型:CC)・・・11.8%

でした。つまり、日本人の約6割が「肥満型で中性脂肪が高い遺伝子タイプ」に該当することが分かりました。

「ユーグレナ・マイヘルス」の遺伝子解析サービスと「ジーンクエストALL」には、遺伝子に注目したダイエットに関する項目として「基礎代謝」「食欲調節」「脂肪産生」「糖への応答」などがあります。ご自身のタイプが気になる方は、「遺伝子解析サービス」を試して健康管理に役立ててみてはいかがでしょうか。

【調査概要】
調査方法:ゲノムデータの解析をもとに調査
調査対象:「ユーグレナ・マイヘルス 遺伝子解析サービス」、「ジーンクエストALL」の利用者
対象者数:ゲノムデータ:21,371人
調査時期:2023年9月
調査項目:ゲノムデータ「ダイエット【脂質代謝】(SNP:rs651821)」の項目について、「肥満型に多く血中脂質濃度が高いタイプ(遺伝子型:CT)」に該当する人と「肥満型に多く血中脂質濃度が高いタイプ(遺伝子型:CC)」に該当する人の割合を足して、都道府県ごとに算出

【ユーグレナ・マイヘルス 遺伝子解析サービスとは】
個人の健康リスク・体質・祖先について350項目以上の遺伝子型を解析し、どのような病気にかかりやすいか、どのような体質の遺伝的傾向があるかについて結果を提供するサービスです。

遺伝子解析項目は定期的にアップデートしていて、2023年9月には、「二重まぶた」の項目の新規追加と、「テロメア長(細胞の寿命に関連)」「ALP値(肝機能の指標)」の2つの項目を、アジア人集団、および日本人集団を対象とした研究報告に基づいた情報に更新しました。さらに、同年10月には、「冠動脈疾患」と「空腹時血糖値(糖尿病の指標)」の2つの項目の更新を実施し、「冠動脈疾患」の項目は、ポリジェニックスコア(PGS)を用い、これまでより高い精度の解析結果を提供、「空腹時血糖値(糖尿病の指標)」の項目は、日本人を含む集団を対象とした新しい研究報告に基づいた情報へと更新しました。詳しくはこちらをご覧ください。