ユーグレナ社創業のきっかけとなった地、バングラデシュ。ユーグレナ社では、仲間※1がバングラデシュへ行き、現地事業の一部を実際に体験する研修訪問を2019年に開始しました。新型コロナウイルス感染症の影響により、約3年間実施できずにいましたが、ようやく2022年から再開することができました。
再開後2回目となる今回は、2023年1月14日~19日に実施された4泊5日のバングラデシュ研修訪問についてお届けします。普段の業務では直接バングラデシュと関わることが少ない仲間たちが、現地で何を見て、聞き、話し、そして感じたのかをお届けします。
※1 ユーグレナ・グループでは、同じ志を持った社員のことを「仲間」と呼んでいます。
第1編は、バングラデシュ南東部のコックスバザールにあるロヒンギャ難民キャンプへの訪問についてです。
普段中々入ることができないキャンプに特別に入ることができ、ユーグレナ・グループがキャンプ内で食料支援している現場を見た仲間たち。難民キャンプで実際にそこで生活する人々と接し、何を感じたのでしょうか。
行程①:成田を出発~ダッカ空港に到着
今回研修に参加した仲間には、CEOの永田さんとCHROの岡島さんも参加!
11月に実施した研修訪問と同様、シンガポール経由でのフライトでバングラデシュへ向かいました。シンガポールでトランジットの間に軽食でおなかを満たし、ダッカへ向けて準備万端です。
私たちがバングラデシュに入国した日は、「ビッショ・イジュテマ」という現地の大規模な巡礼とも重なったため、普段でも十分にぎやかな空港が一層にぎわっており、空港から車を出すのにも一苦労の混雑ぶりでした。
深夜にもかかわらずクラクションが鳴りやまないほどの交通渋滞を抜け、なんとかホテルへ到着。明日からの研修に向け、各自からだを休めました。
行程②:国内線フライトでコックスバザールへ移動~ロヒンギャ難民キャンプを訪問
翌日は国内線のフライトを伴う移動のため、朝の6:40にホテルを出発しました。この日は日曜日だったのですが、バングラデシュでは金曜と土曜が休日で、日曜は平日ということで、街は早朝にもかかわらず通勤する人々が多くいました。8:00発の飛行機に搭乗し、首都ダッカからロヒンギャ難民キャンプがあるバングラデシュ南東部のコックスバザールへ移動しました。
約1時間のフライトでコックスバザール空港へ到着し、到着後は国連世界食糧計画(WFP)の本川さんと合流しロヒンギャ難民キャンプへ向かいました。
ロヒンギャ難民キャンプに入る前に、WFPの事務局にて今回訪問させていただく難民キャンプエリアや当社がWFPとともに取り組んでいるプロジェクト※2の詳細について、グラミンユーグレナ※3共同代表の佐竹さんから説明を受けました。
※2 2022年5月11日のリリース:https://www.euglena.jp/news/20220511-2/
※3 ユーグレナ社と2006年ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス博士が設立したグラミンクリシ財団が運営する現地合弁企業
難民キャンプ訪問に際して、事前の書類申請は既に完了していたのですが、前日に難民キャンプ内にて難民間でのトラブルがあり、キャンプへの立ち入りがかなり厳しくなっているとのこともあり、待合室で30分ほど待機時間がありました。どうにか無事キャンプ内への移動許可がおり、いよいよ車で難民キャンプに向かいます。
今回私たちが訪問する難民キャンプは、コックスバザール市内より車で約1時間のキャンプ7です。難民キャンプは30か所近く点在し合計90万人以上のロヒンギャ難民の人々がキャンプ内で生活を送っています。
ここで生活する人々は、ミャンマーでの激しい武力弾圧から逃れるため、着の身着のままでミャンマーから山を越え、川を越えバングラデシュへ流入したロヒンギャ※4の人々です。彼らは難民キャンプ内で割り当てられた区画で野を切り開き、家を建てて生活をしていました。
※4 主にミャンマー西部のラカイン州に暮らす約100万人のイスラム系少数民族。国籍を持たず、1990年代から数十年にもわたって差別と激しい迫害に苦しめられている。参考URL:https://www.japanforunhcr.org/news/2017/14342(国連UNHCR協会)
バングラデシュ政府をはじめ国際機関や各国政府、多くの民間団体のロヒンギャ難民への支援はあるものの、90万人以上の難民がひしめき合う生活は過酷そのもので、彼らはいまだ将来の見通しがたたない状況とのことでした。ユーグレナ社では、2019年に日本企業として初めてWFPと事業連携し※5、グラミンユーグレナ社がバングラデシュにて行う緑豆(りょくとう)栽培事業「緑豆プロジェクト」を通じて、ロヒンギャ難民へEバウチャーシステムを活用した食料支援を行っています。Eバウチャーシステムは、WFPがロヒンギャ難民の情報をカード(Eバウチャー)に登録し、同カードに毎月定められた金額を入金することで、ロヒンギャ難民がWFPと提携した地域小売店(Eバウチャーショップ)から食材を購入することができます。
※5 2019年2月25日のリリース https://www.euglena.jp/news/20190225-2/
難民キャンプへ向かう途中、WFPが行っている農民支援プログラムであるナスの栽培畑も視察することができました。難民キャンプの周辺に住む農民の方が育てた作物を販売し収益をあげる経済循環の仕組みづくりを行っています。
いよいよキャンプが近づいてくるといままでの街並みとは違った物々しい雰囲気の光景が目の前に広がってきました。
現在、キャンプ内では難民1人あたり1か月12ドル(約1,560円)がEバウチャーカードに入金され、キャンプ内のEバウチャーショップで購入できる品目はキャンプによって少しずつ異なるとのことです。このカードはキャンプ内でしか使用できず、誰がいつ何を購入したかなどが履歴として確認できるため、キャンプ内の強盗や支援物資の購入以外に使われることなどを防ぐことができます。
支援物資一覧に各品目の値段がついていて、グラミンユーグレナ社が食料支援している緑豆も一覧に入っていました。
野菜だけでなく、チキンや魚も支援物資として準備されていますが、野菜に比べると高価な品目となっていました。
Eバウチャーショップの視察後は、特別に難民キャンプ内を車で廻って見ることができました。
難民キャンプを訪問する前は、TVで見るようなテントが張り巡らされた場所をイメージしていましたが、実際は一つの街のようなものが形成されていました。「衣食住の提供を受けて生活する」だけではなく、例えば難民キャンプ内に初等教育を受けられる施設や技術支援センターもあり、難民の人々の社会生活が繰り広げられていました。
キャンプ内を車で走っていると、視察の機会が限られていることもあってか、子どもたちが物珍しそうに集まってきました。車から降りて少しコミュニケーションをとってみると、最初はお互い遠慮がちではありましたが徐々に打ち解け合い、彼らはくったくのない笑顔をみせてくれました。
難民キャンプ内のWFP事務所には宿泊施設やレストランが併設されており、各国からの支援者の休養施設となっています。そこで昼食をとりながら、難民がかかえる課題に対して本川さんと意見交換をし、ロヒンギャ難民問題の背景や複雑さ、解決の難しさについてほんの少しではありますが知ることができました。「正義の反対もまた正義。ユーグレナ社がどのような立場(思想)であるべきかは明確にする必要がありそうだ」という永田さんの言葉に一同考えさせられました。
行程③:コックスバザール市内で夕食
難民キャンプの視察を終えてコックスバザール市内へ車で移動しました。コックスバザールはバングラデシュ南東部に位置し、国内では海岸沿いのリゾート地として人気の街です。そのリゾート地から車で一時間程度のところに難民キャンプが形成されているのです。
夜の喧騒の中、日本人は珍しいようで歩くたびに写真を求められました。
今回、人生で初めて難民キャンプへ足を運ぶことができ、難民問題自体はもちろん、支援のあり方や各国政府、各組織の考えなどに触れることができました。これまで日本からメディアを通してしか知る機会のなかった問題に、その当地に行けたこと、感じたことは簡単に言葉では言い表せません。すごく考えさせられる1日となりました。また、そのような問題にユーグレナ社が立ち向かっていること、実際にキャンプ内でユーグレナ・グループが支援する緑豆が売られているところを目にし、改めて「私たちは本気で人と地球を健康にするんだ」と気が引き締まりました。