GENKIプログラムの食育活動について
【2017年8月の活動報告】
1.GENKIプログラムの食育活動
5月に実施した血液検査の結果がでたので、その診断書を子どもたちのご両親に渡しました。貧血状態の子どもが多かったため、ご両親に医師から状況を説明した上で食育活動を実施しました。
- (1)食生活
日本ではサラダというとレタスやトマトなどの野菜を思い浮かべますが、バングラデシュではスライスされたキュウリと小さな玉ねぎのみです。そのため鉄分を十分に摂取できず、貧血状態に陥りがちです。出来るだけ鉄分を摂ることができるよう「ラルシャック」(写真-2)という、ほうれん草に似た野菜を週に1回は食べるようアドバイスをしました。親たちには栄養を摂るにはお金がかかるという認識があります。しかし工夫次第ではあまりお金をかけなくても栄養が摂れる、という知識を共有ししたところ、お母さんたちも「早速実践してみます!」と前向きな姿勢を示してくれました。 - (2)手洗い指導
バングラデシュではスプーンを使わずに右手の指を器用に使い、皿の上のカレーを残すことなく平らげます。そのため食事の前に手を洗うことは衛生上とても大切です。スラム街の家庭や学校には石鹸はありますが、食事前に手を洗う習慣が徹底されていません。下痢にならないよう、家にある石鹸を使って丁寧に手洗いをするよう指導することにより衛生観念の大切さを学んでもらっています。
写真-1:医師からの説明の様子
写真-2:ラルシャック
2.飲み水に関する講習会の効果
前回のレポートでも紹介しましたが、GENKIプログラムでは飲み水に関する講習会を学校で実施しています。今回はその効果について実例を紹介します。
多くのスラム街では水道がないため、常日頃から不衛生な水をそのまま飲んでいます。そのため下痢を患っている子どもたちが多く、先生と現地スタッフは水を必ず煮沸して飲むよう指導しています。SSKS小学校 (SSKS free primary school)に通うマジャッドくん、サブリナちゃん、ハミダちゃんは講習会を受けた後に家族にもその話を伝え、煮沸した水を飲むようになりました。
ほどなくして下痢が治った、とスタッフが学校を訪問した際に伝えに来てくれました。はじめは、面倒なためなかなか煮沸してくれなかった親たちも、子どもたちが下痢に悩まなくなったことを伝え続けたことで、煮沸してくれるようになりました。煮沸の効果を知った子どもたちは、自ら近所の人たちに煮沸した水を飲むようアドバイスするようになりました。
そして今、煮沸した水を飲む家庭が増えています。実際に子どもたちと一緒にスタッフが家庭を訪問すると、子どもたちの家庭やその近所の10世帯が煮沸した水を飲んでいました。講習会で学んだことを子どもたちが自ら周りの地域住民へ発信し、健康状態改善に活かされていることを嬉しく思います。このように子どもたちだけでなく地域住民へも効果が出るよう、講習会を継続していきます。
写真-3:水を汲む場所
3.スラム街の子どもたちが抱える問題と戦う先生の紹介
「結婚したくない!学校で勉強したい!」13歳のタニアちゃんは、心の叫びを校長先生であり、学校唯一の先生でもあるアヌ先生に訴えていました。バングラデシュの法律では男性は21歳、女性は18歳以上が結婚できる年齢となっていますが、スラム街では親が持参金目当てで18歳未満の少女を10歳以上年上の男性と結婚させることが多くあります。実際に18歳未満で結婚を余儀なくされる少女は半数を超え、さらに15歳未満で結婚をする少女も20%近くいます。
タニアちゃんが通うMSS NFE校は、全校生徒数27人の小さな学校です。昨年は7人の子どもたちが上記のような結婚をせざるを得ない状況となりましたが、アヌ先生はその内3人の結婚を止めました。全ての児童結婚をなくすことは大変困難なことです。先生は地域の有力者に話をするなどして、子どもたちを守る努力をしています。
写真-4:家庭訪問(一番左がアヌ先生)
4.エーブロックガーバメント学校 (A Block Government School) の紹介
今月よりGENKIプログラムの対象 39校の紹介を毎月行います。まず第1校目はエーブロックガーバメント学校(A Block Government School、以下AGM校)です。対象校39校のうち、バングラデシュ政府によって運営されている学校2校のうちの1校です。
AGM校では、2014年4月のGENKIプログラム開始時よりユーグレナクッキーを配布し続けています。配布当初はNGOが運営する学校でしたが、政府の援助を受け2015年より公立化されました。学校運営費は政府負担となり、AGM校の教師(ボランティアが大半)は試験等を受けることなく自動的に国家公務員の職を得ることになりました。ところが、公立校になると外部からの支援を受けられないためクッキーの配布を続けられない、という問題が生じました。そのためバングラデシュ政府にクッキーの配布が続けられるよう嘆願書を提出するなど、何度も交渉し、紆余曲折を経て例外的に許可を得ることができました。このような経緯があったので校長先生の思いはとても強く、管理が行き届くよう自分の部屋にクッキーを保管するなど、GENKIプログラムを大切に育んでくれています。このような先生達の努力により、AGM校ではクッキー配布の最長記録を継続することが出来ています。
写真-5:AGM校の先生と子どもたち
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写真-6:校長先生の部屋にクッキーを保管
今月もありがとうございました。 引き続きご支援よろしくお願い致します。
株式会社ユーグレナ
海外事業開発部 / バングラデシュ事務所