バングラデシュで学校に通いながら路面店で働く少年の話 
【2019年1月の活動報告】

今期(2018年10月~2019年9月)のユーグレナクッキー配布目標230万食に対し、1月までに約69万食(進捗率:30%)を配布しました。

1.学校に通いながら路面店で働く少年の話

今月はGENKIプログラムの対象校であるチョイス・トゥ・チェンジ小学校に通いながら、路面店で働くヤスミン君(15歳)を紹介します。彼は、お父さん、お母さん、妹、弟の5人家族です。彼が11歳の時、警備員として働いていたお父さんが病気で働けなくなってしましました。代わりにお母さんが家政婦として働きだしました。しかし世帯月収が約13,000円から約10,000円に減りました。スラム街の平均世帯月収が約20,000円のため、生活はさらに苦しくなりました。当時ヤスミン君はお母さんへ「どうしてお父さんは働けないの?もしお父さんが働けたら、食べることに困らないのに!」と不満を口にしていました。お母さんは「これが私たちの運命だから受け入れなさい。」と話すものの、11歳のヤスミン君にとって、家庭が困難な状況にあることを受け入れられないでいました。
 ヤスミン君は13歳になって、親戚の紹介でフスカという軽食を販売する路面店で仕事を始めました。フスカはチップスのような丸く揚げたものを半分に割って、中に芋、豆など各種スパイスを詰め、そこに少し酸味のあるソースをかけて食べる、バングラデシュの定番ストリートフードです(1皿50円)。彼はフスカを作り、販売しています。彼の1日は、学校に10時から16時まで通い、その後17時から22時まで働きます。日収は約80円で、1ヶ月に約2,000円稼いでいます。お母さんも家政婦をやめ、工事現場で日雇いの仕事を始めました。よって、世帯月収は16,000円になりました。
 仕事を始めた当初、勉強がおろそかになってしまっていたそうですが、今は朝早く起きて宿題を行い、勉強と仕事を両立しているそうです。ヤスミン君は「学費は無料なので、12歳の弟と8歳の妹も学校に通うことができているよ。僕が働いたお金で弟や妹にお菓子を買ってあげることもあるんだ!」と家族を支えられるようになったことで、働くことにやりがいを感じているそうです。

  • 写真-1:路面店で働くヤスミン君
    写真-1:路面店で働くヤスミン君
  • 写真-2:ヤスミン君が作ったフスカ
    写真-2:ヤスミン君が作ったフスカ
  • 写真-3:学校で勉強するヤスミン君
    写真-3:学校で勉強するヤスミン君
  • 写真-4:工事現場で働くお母さん
    写真-4:工事現場で働くお母さん

2.新たにユーグレナクッキー配布を開始した小学校の話

今月から新たに、ノウレッジ・ビュー・アカデミー小学校に通う約180名の子どもたちへクッキーの配布を開始しました。今月は、同校でユーグレナGENKIプログラムの運営に携わってくださっているモイヌル校長を紹介します。彼は、1990年から2004年までの14年間、専門学校で経済学を教えていました。そして、子どもたちと接することが好きな彼は、昼休みや放課後に専門学校の近くにあった同校を訪れていました。子どもたちと交流しているうちに、専門学校で学生へ講義を行うだけではなく、学級担任制の小学校で子どもたちと向き合い、子どもたちの健全な成長を見守りたいと考えるようになりました。そういった背景から、2004年より同校で校長を務めており、今回GENKIプログラムの導入を決めてくださいました。
 モイヌル校長は、校長として学校の運営に携わる傍ら、担任を持ち授業を教えることもあります。先生は、家庭の事情で学校を頻繁に休んだり、勉強についていけなかったりする子どもたちに対し、補講を実施しています。この補講のおかげで専門学校や大学を卒業し専門職に就いた子どももいます。卒業生のベリさんもその1人です。彼は、ベリさんが同校に通っている時、授業で質問があれば彼女が理解するまで熱心に補講で教えたり、小学校卒業後も進路相談に答えたりなど親身になって接していました。そういった支えがあり、彼女は高校卒業後、奨学金を得て名門校のダッカ商業専門学校に入学することができました。そして念願であった公務員試験に合格しました。現在彼女は公立小学校の教師として働いています。彼は彼女の活躍を自分のことのように喜んでいます。彼女のように卒業生全員が望む道へ進むことはできませんが、学校生活で学んだことが将来彼らの生きる糧になると信じています。

  • 写真-5:授業を行うモイヌル校長
    写真-5:授業を行うモイヌル校長
  • 写真-6:ユーグレナクッキーを配布するモイヌル校長
    写真-6:ユーグレナクッキーを配布するモイヌル校長
  • 写真-7:ユーグレナクッキーを食べる子どもたち
    写真-7:ユーグレナクッキーを食べる子どもたち
  • 写真-8:小学校で教師として働くベリさん
    写真-8:小学校で教師として働くベリさん

3.バングラデシュで行われる公的試験について

バングラデシュの教育制度は、以下の表のように小学校が5年間、中学校が5年間、高校が2年間で、その後大学や専科短大に進みます。バングラデシュでは日本と異なり教育制度が整っていないと思われるかもしれませんが、センター試験と同じような全国統一進級試験があります。各教育課程終了後、統一進級試験が実施されます。日本では、一般的に義務教育である小中学校で留年することはありません。しかし、バングラデシュでは小学校からこの試験に合格しないと進級できません。

学年 教育課程 試験
1~5 初等教育 初等教育修了証
(日本でいう小学校) (PSC:Primary School Certificate)
6~8 前期中等教育 前期中等教育修了証
(日本でいう中学校) (JSC:Junior Secondary Certificate)
9~10 中期中等教育 中期中等教育修了証
(日本でいう中学校) (SSC:Secondary School Certificate)
11~12 後期中等教育 後期中等教育修了証
(日本でいう高校) (HSC:Higher Secondary Certificate:)

本試験の特異な点を紹介します。統一進級試験では、学校がPSCの点数が高いことを宣伝するため、先生が黒板に答案用紙を貼り、子どもたちに写させるといった問題が過去にありました。そのため、子どもたちは普段通っている学校ではなく別の学校で受験します。また、試験終了後の習慣として、合格した子どもたちの両親は、親戚や近所に幸せのお裾分けとしてお菓子を配ることがあります。このように、進級をかけた統一試験は、両親、子どもたちにとって一大イベントです。

  • 写真-9:試験の様子
    写真-9:試験の様子
  • 写真-10:試験勉強をする子ども
    写真-10:試験勉強をする子ども


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株式会社ユーグレナ
海外事業開発部 / バングラデシュ事務所