バングラデシュにおけるコロナ禍での教育への影響 
【2020年12月の活動報告】

1. 2020年12月活動報告

当社はGENKIプログラムにおいて、コロナ禍の休校期間の中、ユーグレナクッキーの配布を再開しました※1。12月はGENKIプログラム対象校66校のうち28校の約5,800人に対し、16.4万食のクッキーを配布しました。

※1休校中でも先生方にはクッキー配布の為、学校に来ていただき、プログラムを再開する仕組みを確立しています。コロナ禍におけるGENKIプログラムの活動状況については、2020年8月2020年10月の活動報告をご参照ください。
※2 例年12月は月の半分以上が冬休みで配布日数が少なくなりますが、2020年度は15日分を1度にまとめて計2回(合計30日分)配布しました。そのため、コロナ禍前の2020年9月期より配布数が多くなっています。

2. バングラデシュにおける新型コロナウイルス感染症の教育格差への影響

国連ニュースによると、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により世界191か国で学校が閉鎖されました。これにより少なくとも15億人の子どもの教育に影響が及ぼされています※3
 授業のスタイルがリモート中心になり、インターネット環境の有無が教育機会の格差となり、世界的に問題になっています。

バングラデシュ国内では、2020年3月17日から休校が始まりました。10月に政府が学校に対し、定期的に生徒に課題を出すなどの臨時対応を求めていますが、対応できる学校は限られています。2020年10月時点で、バングラデシュ国内では3,000~4,000万人の生徒が依然正規の授業を受けられていません※4※5

バングラデシュでは、オンライン授業に対応することは、先生と生徒両方にとって課題となっています。例えば、9割の人は大画面デバイスを持っておらず※4、スマートフォンの普及率も2019年時点で18.9%という事実がその背景にあります※6

オンライン授業の壁は高く授業再開は難しい(写真はイメージ)

また、インターネットの通信費の問題もあります。1GB(中画質の動画視聴2時間相当)が日本では平均3.91ドル(約407円)のところ、バングラデシュでは平均0.7ドル(約73円)と1/5以下です※7が、それでもバングラデシュのほとんどの人にとっては、決して安いものではありません※4

多くの生徒がコロナ禍での学習に限界を感じており、予定通り卒業できるのか、また将来についても不安を感じています。

※3 UN News (2020). Startling disparities in digital learning emerge as COVID-19 spreads: UN education agency
※4 Emon et al. (2020). Impact of COVID-19 on the Institutional Education System and its Associated Students in Bangladesh: Asian Journal of Education and Social Studies 11(2): 34-46
※5 BIPSS Community (2020). The impact of COVID-19 Pandemic: Education sector of Bangladesh
※6 Newzoo Global Mobile Market Report 2019 | Light Version
※7 Cable.co.uk (2020). Worldwide mobile data pricing 2020. The cost of 1GB of mobile data in 228 countries

3. GENKIプログラム対象校の状況

スラム街の子どもたちが通うGENKIプログラム対象校では、66校のうち50校で、定期的に生徒を学校に呼び、課題を課すなど部分的に授業を実施しています。オンライン授業に対応できている学校は1校のみです。約4校に1校(登録生徒数2,580名)はいまだに完全に休校したままです。
そればかりでなく、運営を寄付に依存している学校においては、3校が存続の危機にさらされています。寄付者の方が事業で損失を被ったり、彼らの家族の医療費負担が増加したりしたために寄付する余裕がなくなったという背景があります。

GENKIプログラム対象校66校の状況(2020年12月時点)

4. 学校運営の危機の中での教育

完全休校が続く学校で、先生や子どもたちはどうしているのでしょうか。
 GENKIプログラム対象校のマムヌール・ラシド小学校は、校舎自体を既に失ってしまっています。同校は賃貸ビルで運営されていましたが、寄付金が受け取れなくなったことにより、2020年5月にビルを返すことになりました。

休校により学業が満足にできない中、生徒は遊びや家事の手伝いに時間を費やすしかなくなっています。先生たちは、生徒が長期間勉強から離れることにより、退学したり児童労働に就いたりすることを懸念しています。休校が始まって以来、既に3割ほどの生徒とは連絡が取れていません。

また、パンデミック以前、当社は同校60名の生徒にユーグレナクッキーを毎日配布していましたが、現在、校舎自体がなくなってしまったため配布再開の目途は立っていません。生徒たちはすぐに飢餓に陥る状況ではないとのことですが、家庭によってはGENKIプログラム以外の政府の救済措置を受けたり、食事の量・質を落としたりして窮状をしのいでいる状況です。

そんな中でも、先生たちはなんとかして教育を続けようと画策しています。ライハン・フェルドウシ校長はビルの管理者に小さなスペースを使わせてもらえるよう頼み込み、先生たちは週に2回そのスペースに通って、電話で生徒たちとコミュニケーションを図っています。

写真-1:寄付の打ち切りで校舎を借りられずビルの庭を借りて集まる
写真-2:生徒へ電話をする先生

5年生のアハメド・リドゥイ君は、両親の携帯電話を使って校長や先生からの電話を受けています。「先生は私に勉強を続けるよう勧めてくれます。数学やベンガル語、英語、社会科学を学んでいますが、このような環境で新しいことを学ぶのはとても難しいです。」と話していました。

フェルドウシ校長は、生徒と学校との関係が途切れることにより、生徒のメンタルヘルスにも悪影響が及ぼされることを懸念し、ほかの先生と一緒に継続的に生徒たちに電話をかけています。
「電話だけの会話で効果的な教育を提供し、生徒の問題を解決することはできません。しかし、生徒との関係を維持することに役立ちます。」
 フェルドウシ校長は校舎をもう一度借りるために資金集めに尽力しており、子どもたちが再び学校で授業を受け、教育の恩恵を受けることを望んでいます。

今回紹介したように、都市封鎖(ロックダウン)により、いまだに授業を再開できていない学校が少なくありません。当社は今後も休校中の学校と情報を共有し、授業が再開された学校から随時GENKIプログラムを実施していく予定です。
 世界的なパンデミックの中、当社はバングラデシュの子どもたちのためにできることを続けてまいります。引き続きのご支援をお願い致します。

株式会社ユーグレナ
海外事業開発部 / バングラデシュ事務所