2018年師走。クラシエホールディングス株式会社(以下クラシエ) 岩倉社長と、ユーグレナ社社長の出雲の対談が実現しました。
クラシエが掲げる「クレイジー」をキーワードに、両社両名の想いがあふれ出す…その様子をお届けします!
合言葉はクレイジー
岩倉社長(以下岩倉):(「飲むミドリムシ」、飲んで)想像より…美味しいです(笑)
出雲充(以下出雲):意外でしたか?その意外が重要なんです(笑)
ミドリムシの味ってなかなか想像がつかないんですよね。でもほかの藻類と同じようなものなので日本人にはなじみがあるものではないかと思う。
飲んでもらってミドリムシの魅力を伝えていきたいが、いかんせんベンチャーという事もあり、なかなか難しい。ミドリムシは栄養たっぷりで味も知っている味に近いのに、多くの知らない人が気持ち悪いと思ったまま、ミドリムシに出会わないまま終わってしまうのはとても悲しい。もっと一生懸命発信していきたいといつも思っています。
岩倉:その魅力を理解してもらうところに苦労されたのですね?
出雲:その通りです。ミドリムシという名前は気持ち悪るがられる。そんな商品を置いたら、その周りの商品も売れなくなるとすら言われた。
500社にミドリムシを売り込んでも、名前が悪い、気持ちが悪い、他社での扱い実績がないことなどから断られたことはとてもつらかったです。
岩倉:私たちは社名が変わったことがありますが、当時カネボウからクラシエになっただけで、お客さまに相手にされなくなった。少しその経験と似ているかもしれませんね。
出雲:どうやって乗り越えたんですか?
岩倉:お客さまがクラシエという名前に接する時間を長くするしかないです。
CMでできる限り社名を入れるようにしたり。ただ、社名とブランド名のどちらを優先させるかとなると、ブランド名になる。なので、「いち髪」の名前が社名である「クラシエ」より先行してしまった。
そして皆カネボウは知っているけれどクラシエは知らない、と。そう意味では苦労しました。
出雲:なかなか普通の会社が経験することではないですね。
乗り越えて残っているわけですが、どうやってモチベーションを保ってきたのですか?
岩倉:前任社長時代では、普通の会社になろう、が合言葉でした。まずは、当たり前のことをできるようになろう、と発信しました。
よく、経営陣が社員に対して、危機感を持ちなさいなどというが、なかなか伝わらないというのが本音であった。しかし、私たちは経営陣が普通の会社になろうという事は経営陣の危機感を大きくあらわし、社員につたわったものであった。そして、辞めていった人もいたが気持ちが伝わった人間は残ってくれた。
出雲:一番苦しい時に残ってくれた人がいるのは心強いですね。今、社員の半分以上はクラシエ時代のみしか知らないとのことですが、今は絶好調な時期でもある中、過去にあった大変な時期を、その時期にいなかった社員にどう伝えていかれるのですか?
岩倉:今、クラシエに入ってきた社員はカネボウではなく、クラシエを好きになって入ってきてくれた。そういった意味では、過去に引きずられたくないと考えてます。
一方で、ある意味モチベーション高く保ってきた10年のこの後をどのようにしていくか、というところで、「クレイジークラシエ」という言葉を使うようになりました。「クレイジー」という言葉は普通、会社では使わないと思います。しかし、「クレイジー」とは、色々な意味を持ち合わせている。まず、夢中になりたい、という意味。
世の中を変えている人は、最初はみんなが疑問に思うような事、こんなことやって何になるのだというような事を夢中でやっている。でも、実はそういう人がそのことをやり続けることで世の中を変えていっていると思うんです。
今は、クレイジーだと言われていても、数十年後にさすがだねと言われる会社になっていきたい、という思いから、「クレイジー」という言葉を使いました。
出雲:私は、石油の出ない日本で、CO₂を出さないミドリムシのバイオジェット燃料で飛行機を飛ばす、とずっと言い続けてました。周りからはそれは「クレイジー」だと...むしろ会社を作った時から、クレイジーと言われ続けてきたといっても過言ではないかもしれません。
そういった意味ではミドリムシはクレイジーと言われ慣れしていますが、岩倉社長が「クレイジークラシエ」と掲げてくださったことは、とても嬉しいです。
岩倉:ビジョンを新しく制作するときに、全社アンケートを行いました。 10年を振り返って、どこが良いところか、悪いところはどこか、と。経営陣が
読み込んで、「なるほどな」という点、直さなくてはいけない点が出てきました。
さらに、社外の人やステークホルダーの方40名近い人にもヒアリングをしまし
た。これはクラシエが破綻したときにも同じ質問をしていて、2つの結果を比較
してみた。結果から1つ分かったことは、真面目な人が多い、熱心に仕事する人が多い、という事。一方で、安定志向、面白さに欠けているという声も出てきた。この声がでてきて、ここで私たちは安堵してはいけないと気付いたのです。
ここで安堵してしまったら、これ以上の成長は望めない。ベンチャーも歴史の長い企業も関係なく、常に新しいことをしていかないと会社の発展は望めない。当事者意識はもともとありましたが、自分がやらなくては、この会社はつぶれるという認識が必要でした。
だから、ここで会社の発展を止めないためにもビジョンの「クレイジークラシエ」やメッセージで「圧倒的な当事者意識」という言葉を使うことにしました。
出雲:ただの当事者意識でなく、「圧倒的な当事者意識」。
この言葉の発信を決断した時、まわりに驚かれませんでしたか?
岩倉:正直驚かれました。
ただ、10周年の時に取引先から「こういう動きを待っていた」と言われて、すごくよかったと再認識しました。クラシエがこういう言葉を使っているようだったら、私たちも頑張らなくてはならないと言ってもらえた。
仲間とともに変化を乗り越えていく
出雲:クラシエの10周年に当たって、次の10年、100年のクラシエの「在るべき姿」ではなく、「在りたい姿」を社員と議論して決められたというお話ですが、クラシエのwebページなどにおいて、「未来」のルビが「あした」になっているのですが、これは、何か理由があるのですか?
岩倉:クラシエは経営理念でも、未来ではなく「明日」を使い続けています。明日」 を使うのが好きなんです。
ユーグレナ社では、社員の方を「仲間」と呼ぶんですよね、その理由はなぜです
か?ちなみに私の前任社長の石橋も同じように「仲間」という表現を使っていました。
出雲:石橋さんと思考のプロセスが似てるかもしれないです。私は言葉に込めた文化を醸成していきたいとおもっていて、ベンチャーにはそういったものがあまりないなと。
仲間に幸せになってもらいたいし、仲間が一番大切だという事をどうしたら伝わるのか考えた時、リーダーである自分が社員を「仲間」と言い続けるのが大切だと考えたんです。
新しい「仲間」が来る。新入社員ではなく、新入仲間と呼ぶ。
最初は、言いにくいが、自分が率先して言うと、ほかの人も使ってくれるようになります。
岩倉:カネボウからクラシエに代わる最初に、「10年後の仲間たちへ」というものを会社の方針に掲げました。
100年続いたカネボウから、クラシエに代わるとき、会社はただの一年目であった。その気持ちの表れが「10年後の仲間たちへ」という方針ができた。
出雲:僕らみたいなベンチャーに一番足りないものは、文化や歴史です。
クラシエ自体は、11年目とは言えど、100年続いたカネボウからの文化や歴史の良いところを受け継がれています。そして、カネボウがクラシエとして成長できるというのは、日本で一番突然変異的ですごいですね。
岩倉:すごいかどうかは、数十年後にわかってくるかなと思ってます。
でも、古くて合わなくなったら壊せばよいと思っている。
環境に対応していくには、壊していかないと対応できない。意外と壊すのは好きなのです。
出雲:これだけ好調な時に壊すのって勇気がいりますよね?
岩倉:うまくいっているというのは何の保証もないですよね。だったら早めに手を打った方が良い。
良い時というのは、本当に何も起こらない。良い時こそ、大胆的な行動に出られるが、悪い時は、うまくいかない。あの時やっておけばよかったとなる前にやっておくべきだと思っています。そこでうまくいかなかったら、1年後にも結局うまくいかないものです。
出雲:岩倉社長は変化が大好きですね!
今のままで良いと思っている人がたくさんいるのに、会社のためにより良い変化をどんどんもたらそうとしている。相当クレイジーじゃないとできない。
岩倉:私の世代はIT、AI、IoTなど、なかなか使いこなせない世代です。
自分が変わっていかないと追い付いていけないなと。
なので自分も変わらなくてはいけないし、周りにも変わってほしいと考えています。
※こちらのインタビューはクラシエの企業理念イベント「しるしの日」の合わせて行われたに内容をもとに作成しています。
~後編に続く~