株式会社ユーグレナは、2024年2月より18歳以下のCFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)の取り組みをアップデートし、「未来世代アドバイザリーボード」を設置※1し、活動してきました。
2021年CFOと共に初代フューチャーサミットメンバー※2として活動していた経験を活かし、2024年2月からは未来世代アドバイザリーボードのメンバーのひとりに就任した來海(きまち)潤一郎さんにこの一年の活動についてユーグレナ社サステナビリティ推進部 部長の宮澤がインタビューしました。

※1 2024年2月1日リリース:https://www.euglena.jp/news/20240201-3/
※2 CFOとともに、当社のサステナビリティに関するアクションおよび達成目標の策定に携わるサミットメンバー
※参考:ユーグレナプロジェクト「vol.51 未来世代アドバイザリーボードを設置せよ」https://www.euglena.jp/times/archives/22714

宮澤:來海さんは初代フューチャーサミットメンバー経験者ですが、今回新たに未来世代アドバイザリーボードに就任された際は、どんな思いをもって、どんなことをしたいと考えていましたか?

來海 潤一郎さん(以下、來海):「今回は未来世代アドバイザリーボードのメンバーとして『共創』というコンセプトをもって活動をしてきました。会社(ユーグレナ社)に『こうしてほしい』とお願いするだけではく、最後まで責任をもって一緒に携わっていけたら、という気持ちで取り組みたいと考えていたからです。
また、アドバイザリーボードとして関わっていく上で、ユーグレナ社が考えていることや、実際にやっていることをまずは同世代に発信したいという思いがありました。

ユーグレナ社 未来世代アドバイザリーボードメンバーの來海(きまち)さん

宮澤:來海さんは、この1年どんな取り組みをされてきたのでしょうか?

來海:最初は、ユーグレナ社の現状についてアップデート頂き、社長の出雲さんやCo-CEOのお二人との対話、鶴見の研究所見学や各事業部の仲間との対話を続けました。そういった中で、一緒に最初から設計に取り組めて、未来世代との接点という意味で親和性もあり自分自身としての価値提供ができるところが、出張授業の中で「社会課題解決」のきっかけづくりをする、という取り組みでした。また、経団連のご協力の下、企業行動・SDGs委員会の皆さまと対話などもさせて頂きました。

宮澤:下半期は特に小学校から大学まで、いろいろな学校で出張授業の講師として登壇して頂きました。どういった心構えで臨まれたのでしょうか?

來海:最初に出張授業をやってほしいと言われた時は、少し戸惑いました。経験もなかったですし、どうやって進めればいいのかも分からず正直手探りでした。
でも、実際に授業の構成を考え始めてみると、必然的に僕個人の考えや経験を語ることになり、もしそれを聞いて社会に対してアクションを起こしてくれる人たちが増えたら僕自身もとても嬉しいことだと思いました。そこに大きなモチベーション感じました。

宮澤:手探りで始めたと仰っていますが、実際に來海さんの授業を受けた方々からは評価のお声を多く頂戴しています。実際現場ではどういったテーマで講義されたのでしょうか?

來海:抽象的な意味で言うと『社会を自分事化する』ということを伝えたいと考えていて、『社会に切り取る』というテーマにたどり着きました。まずは社会課題や自分の未来について、自分事化して考えてほしいと思ったからです。小学校の子どもたちにはこの意味は難しく、完全には伝わらない可能性がありましたが、授業を通して少しでも社会という言葉の意味を意識して生活してくれたらいいな、と思いました。

僕自身が高校一年生からユーグレナ社と関わり始めたので、中学生、高校生には具体的な行動を一歩踏み出して欲しいと思いましたし、大学生はより活動範囲を広げることができると思うので、その可能性を示唆できたらいいな、と思っていました。

港区立芝浜小学校(東京都・港区)での出張授業実施風景
サレジアン国際学園(東京都・北区)での出張授業実施風景

宮澤:『社会を切り取る』という視点は大変興味深いですね。これはご自身の経験に基づいたアイデアなのでしょうか?

來海:実を言うと、僕自身が当時高校生の時は『社会』をとても遠くに感じていました。社会に関心をもってニュースを見る人ほどそう思ってしまうのではないでしょうか。報道されているニュースは規模が大きく、自分には関係ない、自分にできることはなにもない、と感じてしまうことがよくありました。
でも、そうやって社会との距離が大きいと感じた時に、自分自身がその問題をどうやって自分事化したかを思い返すと、社会をまずは小さい単位に噛み砕いて、自分の身の回りで変えられることがないか、自分の所属しているコミュニティの中に社会課題の発見や解決に通ずるところはないか、その糸口を探したことに思い当たりました。フューチャーサミットのメンバーに応募したのもそれがきっかけでした。

宮澤:小さい単位に『社会』をかみ砕いて、自分の身近な問題を発見する、とても具体的な『自分事化』のメソッドですね。そういった実体験を持つ來海さんの話を聞いたそれぞれの学校、年代で反応はどうでしたか? 具体的に、どんな『社会課題』があげられたのでしょうか?

來海:小学校では難しい内容にもかかわらず、みんなしっかりと話を聞いてくれました。短い時間ではありましたが、その時間の中だけでも頭をひねってくれたというのは僕にとってとても嬉しい経験でした。具体的には、『道路にごみが落ちているけど自分に何ができるか?』『普段は気にしていなかったことも、授業を受けて疑問が生まれた』などの意見があげられて、本当に身近な課題として自分事化のきっかけづくりにつながっている実感はあります。

中学校、高校では『アントレプレナー養成ゼミ』で授業をしてきましたが、すでに『社会に対して何か行動を起こしてみたい』と考えている子どもたちから『社会を切り取る』という手法がヒントになった、と言ってもらえたことも心に残っています。
大学での講義は大学生だけではなく、企業の方も聞きに来てくださっていて、企業と未来世代と関わることにどんな価値があるかについてもお伝え出来たと思います。

宮澤:それぞれの年代の方に、響く授業をされたんですね。では逆に來海さんが彼らから得られた学びがあったら教えてください

來海:皆さんの吸収力には本当に驚きました。自分も若いと思っていましたが、小学生、中学生、高校生の『前のめりになる力』というのは本当にすごいと思いました。また、講義をするということは自分が今までやってきたことや、自分が考えていることを人に分かりやすく伝わるように言語化するという行為でもあって、それも自分を成長させてくれたと感じています。これまで人に教えてもらうことはあっても、自分が何か教える立場になることはなかったですし、想定もしてなかったので、自分の今までの知見や行動が人に対して価値を与えたと感じられたことが貴重な経験になりました。

出張授業を受講した生徒のアンケート結果(芝浜小学校)
8割の生徒が「おもしろかった」と回答

宮澤:來海さんは未来世代アドバイザリーボードのメンバーとして経団連の企業行動・SDGs委員会の皆さまとの懇談の場にも参加しました(2024年9月13日)。経団連の集まりに來海さんたちのような若い世代が参加することは初めてと聞いています。大手企業のサステナビリティ担当者の方々とお話されて、どのように感じましたか?

來海:自分よりもはるかに長くサステナビリティという分野に携わっている人たちと意見交換をするというのは初めての体験でした。サステナビリティに特に詳しい方たちとディスカッションした時に、自分がこの分野でどういう価値が発揮できるのかということを意識しながら話し合いに臨みました。

経団連の企業行動・SDGs委員会の皆さまと懇談
(右から6番目が來海さん、右から3番目がユーグレナ社・宮澤)

宮澤:他企業の皆さんとお話されて、改めて課題を感じたことはありましたか?

來海:サステナビリティという言葉の粒度が粗いのかな、というのは強く感じました。どの企業の方も、サステナビリティの重要性や、必要性を理解された上で、それをどうやって実現していくかという議論が多かったと思います。僕はこの『サステナビリティ』という言葉自体をもっと分解してアクションプランにしていく必要があると思っています。
SDGsがよい例で、『SDGs』という言葉が日本である程度浸透して、多くの企業がそれに対して取り組んでいるのは、明確に17のゴールと169のターゲットに落とし込まれているからです。
ですから今後より浸透させる際に必要なのは、『サステナビリティ』という言葉の意味を各企業の方々が自分たちの言葉で分解して、実際のアクションプランに落とし込んでいくこと。それを各事業に更に展開していくというプロセスを取らないと実現できないと思います。
そもそもサステナビリティの考え方は西洋から入ってきているものなので、どうやってサステナビリティを日本の文化にしていくのかという議論が先に必要なのではないでしょうか。

宮澤:サステナビリティの浸透・実現のためにはやるべきことを具体的なアクションプランに落とし込むという作業が欠かせない、その通りだと思います。懇談に参加された皆さまからも、來海さんの考えを聞いて、会社ごとのサステナビリティの理解と社内浸透の重要性を再認識した、という意見を頂きました。
改めて、3年前のフューチャーサミットメンバーとしての活動と、今回、未来世代アドバイザリーボードとして1年間近く活動してきた活動とでどんな違いがありましたか?

來海:僕自身その間に高校生から大学生に成長したことで、周りに対する配慮から率直に物事を言いにくく感じる場面が多くなってきました。ですから、僕たちも更に若い未来世代の子たちにどんどんその役割をバトンタッチしていかないといけないのかな、と思っています。

宮澤:最後に、來海さんはこれから先、ユーグレナ社にはどんな会社になってほしいと期待されていますか?

來海:今までCSRやESG、SDGs、そしてサステナビリティという言葉が生まれてきました。ユーグレナ社はいち早く『Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)』をフィロソフィーに掲げてここまで走ってきた企業です。これからも未来の変化に対応しながら、サステナビリティのその先の概念を生み出して、ほかの企業を牽引していくフロントランナーになってほしいと願っています。

写真左:未来世代アドバイザリーボードメンバー・來海さん、写真右:ユーグレナ社サステナビリティ推進部・宮澤

<プロフィール>
來海 潤一郎(きまち じゅんいちろう)
株式会社ユーグレナ 未来世代アドバイザリーボードメンバー。慶應義塾大学 総合政策学部3年生。2019年、ユーグレナ社初代CFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)とともに活動を行うFutureサミットメンバーに選出。未来をつくる実験区「100BANCH」立ち上げ、運営。2021年日本経済新聞社「日経ソーシャルビジネスコンテスト」ファイナリスト選出。

宮澤 郁穂(みやざわ いくほ)
株式会社ユーグレナ サステナビリティ推進部 部長
公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)研究員・広報担当、大手衣料品グローバルメーカーのサステナビリティ担当を経て、2023年1月に中途仲間として入社。
「未来世代との共創という新しいチャレンジを通して、『事業が成長すればするほど、社会課題の縮小につながる』を体現すべく、社会インパクトの可視化にも積極的に取り組んでいきます。」