「恐怖」と聞くと、悪いイメージがある方も多いと思いますが、決して悪いことだけではありません。「怖い」という恐怖の感情は自分の身を守るために必要な感情です。
ユーグレナ社では、ユーグレナ・マイヘルスとジーンクエストの遺伝子解析サービスのゲノムデータをもとに、恐怖を体験した後、怖い気持ちが持続する個人差についての遺伝子項目を解析し、「恐怖が持続しやすい怖がり遺伝子タイプが多い都道府県ランキング」を2024年7月に公開しました。

■怖がりは悪くない!生き残るために必要な感情「恐怖の持続」とは

「怖い」という恐怖の感情を抱き、その恐怖を学習して備えることは、生物学的な観点からすると、生き残るために必要なことです。恐怖があることで、人は危険な出来事やものを避けることができます。

恐怖を経験した後、その時と似た状況に置かれると、実際に何も起こらなくても恐怖を感じるようになります。これを「恐怖条件付け」といいます。条件付けされた恐怖は、何も起こらないことが続けば、似た状況に置かれても次第に恐怖を感じなくなり消えていきますが、恐怖がすぐに消えるか長く持続するかは個人によって異なります。

恐怖が消える過程には「内因性カンナビノイド」という脳内物質への反応系が関与しているといわれていて、内因性カンナビノイド系に関わるタンパクの遺伝子型によって、恐怖の持続に個人差があったことが複数報告されています。

■今回の調査で解析した項目「恐怖の持続」に関する遺伝子型

ユーグレナ・マイヘルスとジーンクエストの遺伝子解析サービスでは、恐怖の消失・持続に関する「SNP:rs2180619」と恐怖への慣れ具合に関する「SNP:rs324420」の2つの遺伝子の違いをもとに、「恐怖の持続」の傾向を評価しています。

①恐怖の消失・持続(SNP:rs2180619)について
2012年、オランダのユトレヒト大学の研究グループは、ほぼヨーロッパ人で構成された約150人の集団を対象として、バーチャルリアリティー空間で音・光・場面の条件と電気ショックを組み合わせて恐怖を覚えさせたのち、電気ショックを与えずに条件だけ繰り返したときに、恐怖で生じる瞬きの反応(驚愕瞬目反射)が持続・消失する様子と、CNR1遺伝子という、カンナビノイドを受け取るタンパクの遺伝子型との関連を調査しました。その結果、CNR1遺伝子上の「SNP:rs2180619」について、遺伝子型によって恐怖の消失・持続に有意な差があることが見出されました。

「SNP:rs2180619」の遺伝子型には、次の3つのタイプがあり、「G」を持っていると、学習した恐怖が持続しにくい傾向があることが分かりました。

  • 恐怖が持続しやすいタイプ(遺伝子型:AA)
  • 恐怖が持続しにくいタイプ(遺伝子型:AG)
  • 恐怖が持続しにくいタイプ(遺伝子型:GG)

今回の当社の調査で、日本人における遺伝子型の割合は、「恐怖が持続しやすいタイプ(遺伝子型:AA)」が65.8%、「恐怖が持続しにくいタイプ(遺伝子型:AG)」が30.6%、「恐怖が持続しにくいタイプ(遺伝子型:GG)」が3.6%でした。

②恐怖への慣れ具合に関する「SNP:rs324420」について
2013年、アメリカ国立衛生研究所 行動ゲノム神経科学研究室の研究チームが、約100人のヨーロッパ人を対象に、モニターに「怒り」や「恐怖」の表情を連続で表示するという、脳の脅威反応を誘引するタスクを実施し、その際測定された脳活動と、FAAH遺伝子という、内因性カンナビノイドの一種を分解する酵素の遺伝子型との関連を調査しました。その結果、FAAH遺伝子上の「SNP:rs324420」について、遺伝子型によって恐怖への慣れ具合に有意な差があることが見出されました。

「SNP:rs324420」の遺伝子型には、次の3つのタイプがあり、「A」を持っていると、恐怖に慣れやすい傾向があることが分かりました。

  • 恐怖に慣れにくいタイプ(遺伝子型:CC)
  • 恐怖に慣れやすいタイプ(遺伝子型:AC)
  • 恐怖に慣れやすいタイプ(遺伝子型:AA)

今回の当社の調査で、日本人における遺伝子型の割合は、「恐怖に慣れにくいタイプ(遺伝子型:CC)」が69.8%、「恐怖に慣れやすいタイプ(遺伝子型:AC)」が27.4%、「恐怖に慣れやすいタイプ(遺伝子型:AA)」が2.8%でした。

■『恐怖が持続しやすい怖がり遺伝子タイプ』が多い都道府県ランキング

今回の調査における『恐怖が持続しやすい怖がり遺伝子タイプ』とは、SNP:rs2180619で「恐怖が持続しやすいタイプ(遺伝子型:AA)」に該当し、かつ、SNP:rs324420で「恐怖に慣れにくいタイプ(遺伝子型:CC)」に該当する人のことを指します。つまり、今回は、「恐怖が持続しやすいタイプで、恐怖に慣れにくいタイプ」に該当する人の割合を都道府県(出生地)別に算出し、数値化しました。

ゲノムデータの解析による、『恐怖が持続しやすい怖がり遺伝子タイプ』の人の割合が相対的に高い都道府県は、1位 青森県、2位 長野県、3位 鹿児島県、4位 高知県、5位 栃木県、6位 山形県、7位 新潟県、8位 福井県、9位 福島県、10位 島根県となり、一方で、41位以下に島根県を除く中国地方各県が集中しました。全都道府県ランキングは次の通りです。

【全ランキング結果はこちら】

■日本人は遺伝的に怖がりさん!?割合はアフリカ集団の約7.5倍!

今回の調査における『恐怖が持続しやすい怖がり遺伝子タイプ』に該当する人の割合を人種別にみると、割合が高い順に、日本人を含むアジア集団(42.4%)、ヨーロッパ集団(23.1%)、ラテンアメリカ集団(18.1%)、アフリカ集団(6.0%)となりました。なお、日本人の割合は、45.1%でした。日本人は、他の地域より遺伝的に「怖がりさん」が多く、割合はアフリカ集団と比べると約7.5倍も多い結果となりました。

しかし、前述の通り、恐怖があることで、人は危険な出来事やものを避けることができます。ご自身がどの遺伝子タイプに該当するか気になる方は、遺伝子解析サービスを試してみてはいかがでしょうか。

【調査概要】
調査方法:ゲノムデータの解析をもとに調査
調査対象:「ユーグレナ・マイヘルス 遺伝子解析サービス」、「ジーンクエストALL」の利用者
対象者数:ゲノムデータ:57,449人
調査時期:2024年7月
調査項目:ゲノムデータ「恐怖の消失・持続(SNP:rs2180619)」と「恐怖の慣れ具合(SNP:rs324420)」の2つを調査し、「恐怖が持続しやすいタイプ(遺伝子型:AA)」、かつ、「恐怖に慣れにくいタイプ(遺伝子型:CC)」に該当する人の割合を都道府県ごとに算出

【ユーグレナ・マイヘルス 遺伝子解析サービスとは】
個人の健康リスク・体質の遺伝的傾向・祖先のルーツについて350項目以上の遺伝子型を解析するサービスです。太りやすさなどの体質や、がん・糖尿病などの病気発症リスクに関する遺伝子情報、病気の予防のためにあなたができることをチェックできます。また、体質や病気の発症は遺伝要因だけでなく、食生活や生活環境など環境要因も大きく影響を受けるため、自分の遺伝子情報を理解したうえで生活習慣を見直す際のヒントとなります。

遺伝子解析項目は定期的にアップデートしていて、2024年6月には、「食の好み(アイスクリーム)」と「食の好み(炭酸飲料)」の2つの項目の新規追加を実施、同年7月には、「喘息」の項目を更新し、ポリジェニックスコア(PGS)を用いた、これまでより高い精度の解析結果を提供できるようになりました。詳しくはこちらをご覧ください。