学校のメンタルへルス対策と「ソーシャルワーカー・チャンピオン」の先生の紹介【2021年5月の活動報告】
1. 2021年5月の活動報告
当社はGENKIプログラムにおいて、コロナ禍の休校期間中、ユーグレナクッキーの配布を再開しました※1。5月はGENKIプログラム対象校81校のうち31校の約4,300人に対し、9.1万食のクッキーを配布しました。4月5日から現地にて再度ロックダウン(都市封鎖)が始まり、またイスラム教最大の祝日であるイード期間※2の影響により、4月と比べ月間配布数が半数程度になっています。
※1 休校中でも先生方にはクッキー配布の為、学校に来ていただき、プログラムを再開する仕組みを確立しています。コロナ禍におけるGENKIプログラムの活動状況については、2020年8月、2020年10月の活動報告をご参照ください。
※2 イード期間とは、日本のお盆のような長期祭日。イスラム教の断食月の終わりを祝う大祭。今年は5月13日~15日となり、その前後は銀行やお店など多くの施設が休業となる。
※3 例年12月は月の半分以上が冬休みで配布日数が少なくなりますが、2020年度は15日分を1度にまとめて計2回(合計30日分)配布しました。そのため、コロナ禍前の2020年9月期より配布数が多くなっています。
2. 子どもたちのメンタルヘルスを守る学校の取り組み
新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが2年目に入った2021年3月、UNICEF(国連児童基金)は子どものメンタルヘルスが深刻化していると警鐘を鳴らしました※1。
※1 UNICEF (2021) 新型コロナウイルス 7人に1人の子どもが外出制限下 深刻化するメンタルヘルス
バングラデシュでは 2020 年 3 月 17 日から今日まで学校閉鎖が続いています。感染リスクを理由に開校は既に何度も延期されており、子どもたちは1年以上教室での通常授業を受けられていません。加えて、公園や動物園などの子どもたちが訪れる施設も閉鎖されています。元々、バングラデシュには公園など子どもたちが身体を動かすことができる場所が少なく、スラム街の学校には校庭もないため、数少ない公園が閉鎖されることにより、子どもたちが身体を動かす機会が極端に少なくなっています。
2020年9月の活動報告でもお伝えしたように、このような状況下で子どもたちの心身の健康は悪化しており、不安、抑うつ、睡眠障害など、さまざまなメンタルヘルスの問題が浮上しています。
GENKI プログラム対象校の1つであるアパラジェヨ小学校でも、先生たちは親や本人たちから、子どもたちが不安を抱えたり抑うつ状態になったりしていると報告を受けています。6年生のアミーナちゃんは、1部屋しかない自宅に閉じこもっていることで気が滅入っており、この約8カ月間頭痛を抱えています。
同校のラフェジャ校長は、この状況を少しでも改善するため、現在の制限された状況を考慮しつつも、子どもたちのメンタルヘルスに良い影響を与えられるような対策を講じました。
それは、ユーグレナクッキーを2週間に1度学校で受け取る際、友だちと本を交換すること。絵を描いて友達と交換すること。下級生に勉強を教えることなどです。また、お母さんの家事の手伝いをすることも子ども達に促しています。
先生たちは、本を読んで物語に触れることで想像力を広げ、絵を描くことで自分の心を開放できるのではないかと考えています。また、勉強を教えることで子どもたちの自信にも繋がると信じています。
アミーナちゃんは先生のアドバイスを受け、自宅で読書をしたり家事を手伝ったりすることに時間をさくようになりました。また、5年生のアミラくんは、川辺に座ることが好きで、川の絵を描くようになりました。7年生(中学1年生)のローハンちゃんも、色々な絵を描いて楽しい時間を過ごしています。向上心のある彼女にとって、絵を友だちと見せ合いっこをすることは、良い刺激となっています。またこれを通じて、様々なアイディアの意見交換ができることにより、絵のレベルもあがってきました。
先生たちは、無為に過ごしていた子どもたちの時間を、徐々に学びと遊びの時間に変えることができるようになっていると考えています。
しかし、前例のない世界的なパンデミック、長期間にわたる休校期間にどのように子どもたちと向き合っていくべきか、学校はいまだ手探り状態です。1日も早く子どもたちが笑顔で登校し、友達と授業を受けられる日がくることを願っています。
3.「ソーシャルワーカー ・チャンピオン」と呼ばれるマナン校長先生の紹介
今月号では、ダッカアイデアルキャデット小学校のマナン校長先生を紹介します。私たちは、2019年6月より同校の子どもたち約500人にユーグレナクッキーを配布しています。校長先生は配布当初より、GENKIプログラムの活動に理解を示してくださっています。クッキーの配布運営だけではなく、過去には子どもたちの血液検査にも協力してくださいました※2。校長先生が率先して取り組んでくださる理由には、「ソーシャルワーカー・チャンピオン」と呼ばれる背景があります。
※2 GENKIプログラム2017年3月の活動報告
1989年、当時13歳であった裕福な家庭出身の校長先生は、お父さんと一緒にダッカ市内を歩いているとき、ホームレスの男性が路上に捨てられていたゴミの中から食べ物を無心に探し、それを口に運んでいる場面を目の当たりにしました。
校長先生は、その光景に大変衝撃を受けたそうです。この経験がきっかけとなり、貧しい人たちのために貢献したいと考え、行動するようになりました。
学生の頃、校長先生は友人たちと募金活動を行い、貧しい人たちを支援する団体に寄付をしていました。その後は、学校運営の傍ら、主に実業家を含む人脈で集まった寄付により支援活動の場を拡げていきました。
今年は、コロナ禍で職や家を失った人たちに米、豆、塩、じゃがいも、石鹸などの生活必需品を入れた袋 (合計800袋)を配布しました。また、支援団体に1,400着の衣服を配布しました。それ以外にも、2年に1度病院と協力し、薬や経口保水液をスラム街の人たちに配布しています。
以下に校長先生の信念を紹介します。
「時間やお金の制約があり、支援活動が思うように進まず苛立ちを感じる時もあります。それでも約10年間継続できているのは、私の13歳での経験が原動力となっているのです。貧困問題を解決したい、GENKIプログラムも私の支援活動も同じ目的です。このライフワークを継続し、いつか貧しい人たちを支援する団体を設立することが私の目標です。」
今後とも、GENKIプログラムへのご支援をどうぞよろしくお願い致します。
株式会社ユーグレナ
海外事業開発部 / バングラデシュ事務所