インドのお隣で、最貧国と言われるバングラデシュ共和国への訪問レポートの第3弾です。
首都・ダッカから大型船で川を下り、「黄金のベンガル」と呼ばれるポトアカリに到着したメンバーたちは、もやしのもととなる緑豆を栽培する現地農家を訪問。 農家では訪問のおもてなしも?!
※2019年4月25~28日の3泊4日の企業研修訪問記です。
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「黄金のベンガル」に上陸
バングラデシュの港を出てから数時間後、船室に響き渡る 「ゴン!ゴゴン!」という音で目を覚ましました。
船室から出てみると、ちょうど船が船着き場に到着したところで、先ほどの音は桟橋に船体がぶつかっていた音であると判明。
時計を見ると時間は午前6時。
「黄金のベンガル」と呼ばれる田園地帯の中心地・ポトアカリに到着です。
船を降りた私たちは、ポトアカリによく来るメンバーがいつも利用しているホテルに移動し、船旅での汗をシャワーで流した後、地元の定食屋に移動して朝食を取りながら一日のスケジュールを確認しました。
さて今日は、ユーグレナ社とグラミンユーグレナ社が取り組んでいる「緑豆プロジェクト」※の提携農家を視察します。まずは緑豆が市場でどのように売られているのかを見るため、ポトアカリの中心街にある市場に向かいます!
※緑豆プロジェクト:日本の農業のノウハウを活用し、バングラデシュで栄養価の高い食材として現地で食されている緑豆の生産性を安定的に向上させ、同国内で販売するだけでなく、日本に供給するプロジェクト。ユーグレナ社とバングラデシュ人初のノーベル平和賞に輝いたムハマド・ユヌス博士率いるグラミン農業財団が、資本比率50:50にて設立したグラミンユーグレナ社が現地で農業指導などを実施。
まずは市場にGO!緑豆の販売現場を見る
移動を開始したのは午前8時頃。
しかし気温はすでに30℃を超え、湿度は80%。とても蒸し暑くて、シャワーを浴びたばかりなのに汗がにじみ出てきます…
ポトアカリの市場は、市場といっても大規模な生鮮市場のようなものではなく、日本の商店街のように個人経営のお店が並んでいる町の一角のことを指します。
肉、野菜、魚、スパイスといったものがところせましと並べられ、地域住民にとって重要な場所になっています。
なお、日本の市場と決定的に違うのは、電力網がまだしっかりと整備されていないので冷蔵庫がないこと。そのためその日に採れた食材は、基本その日のうちに買ってもらうことが前提です。衛生状態も日本に比べるべくもありません。
日本の買い物事情がいかに進んでいるのか、実感する光景でした。
市場の中に、こんもり積みあがった緑の小山がいくつもあるのに気づきました。
そうです、これが緑豆です。
私たち日本人はこの緑豆を発芽させたもやしや緑豆を加工した春雨を食べてますが、バングラデシュではそのまま豆を料理して食べます。「ダール」と言われていて、主食のカレーにたくさん入っています。
なお、緑豆はより大きな粒の方がよりよいもやしになる可能性が高く、形としてもシワが少ないほうがきちんと発芽するとのこと。
緑豆の前で立ち止まっていると、日本人が団体で市場にいるのが珍しかったのか、気が付くと私たちの周りは人だかりに!
好奇心旺盛なバングラデシュ人の気質を垣間見ました。
「緑豆プロジェクト」提携農家のお宅を訪問
市場を後にして、次はいよいよ緑豆を育てている農家に向かいます。
町からは車で1時間弱の道のりです。道中の窓の景色はずっと畑、はたけ、畑。
30分ほど経つと、ドライバーが車をゆっくりと停車させました。信号機もないし渋滞もないので、「なんでだろう?」っと思ってフロントガラスを見ると、なんとそこには一頭の大きなゾウが道をふさいでいました。
ゾウの上には人が乗っていて、ゾウを操っているようです。
こちらの車が停車するなりゾウは近づいてきて、鼻をフロントガラスに押し付けてきます。私たちが面食らっていると、ドライバーは小銭を出して窓から差し出します。するとゾウが器用に鼻で小銭を掴んで持って行き、道を開けてくれました。この間、わずか1分少々の出来事でした。
このようにゾウを使って道をふさぐ行為は、バングラデシュの田舎では時々あるらしく、現地によく来るメンバーもいまままでに1回遭遇したことがあるとのこと。小銭は取られましたが、大きなゾウとの遭遇という貴重な経験をすることができました。
緑豆の収穫をお手伝い
気を取り直してさらに30分ほど進むと、こんもりと茂った森と、畑のコントラストが続く田園地帯に入ります。
訪問した4月は緑豆等を育てている農家が多かったのですが、二毛作や三毛作の関係から時期によっては米や麦を育てていて、収穫前には畑が黄金の絨毯のように見えるそうです。これが「黄金のベンガル」の由来、バングラデシュ人の心の原風景という土地です。
広大な畑にはひょろっと伸びた草がびっしり生えています。草にはサヤが付いていて、サヤの中に入っているのがそうです、緑豆です。
中国では機械を使って収穫している事例も多いそうですが、機械化が進んでいないバングラデシュでは手摘みで豆を収穫しています。なお、手摘みだと豆が痛まないというメリットもあります。
訪問した時も農家の女性たちが収穫しているところでした。サヤを取り除いて豆だけにして、天日に干して乾燥させて出荷できる状態になります。
今回は緑豆の収穫をお手伝いもさせていただきました。中腰になり、低い位置の豆を手で集めるのを続けるのは正直つらい。そして、何より暑い!この日、気温は40℃近くにまで達していました。
ちなみに畑には日差しを遮るものが一切ありません。帽子をもっていかなかったこともありすぐ汗だくになってしまいました(炎天下での作業には帽子は必須ですね)。
バングラデシュ農家の大変さを、身をもって体験する機会となりました。知識でソーシャルビジネスを知っていたつもりになっていたのですが、実際体験することで理解が深まります。
ダールカレーをごちそうになる
収穫のお手伝いをさせてもらった後、農家のみなさんが日本から来た私たちを歓迎したいと昼食にカレーを用意してくれました。緑豆ことダール入りカレーや、他の種類の豆が入ったカレーなどなど、日本にはないスパイスが効いていてどれもおいしい!
全種類をみんなでおいしく完食しました。
カレーと一緒にココナッツウォーターが飲み物として出てきたのも珍しい体験でした。
バングラデシュは水道水がそのままでは飲めないので、ペットボトル入りの水を飲むのが常識ですが、農村部ではココナッツの果汁を水の代わりに飲むのだそうです。ほんのりとココナツの甘い味がして、汗だくの体にはうれしい水分補給でした。
歓迎してくれた農家のみなさんに別れを告げて、次は畑で収穫された緑豆を集める取引所に移動です!
緑豆の取引所
一軒一軒の農家を回って緑豆の買い付けを行っていては時間も手間もかかる…そのため緑豆プロジェクトでは、一定数の農家をまとめるリーダーを地域ごとに選定し、そのリーダーたちが集めてきた緑豆を取引所で選別して買い付けています。買い付けに当たっては、粒の大きさ、シワの無さ、豆の水分などをチェックし、取引所で選別を行っています。
粒の大きさ選別の仕組は単純で、小さな穴が開いた籠に豆を入れて、それを振ります。すると小さな豆だけが下に落ちて大粒の豆は籠の中に残ります。その比率が全体の何割かを見極めて、大粒比率が多いと高い値段で買い付けられるという仕組みです。この計り方は、電気がなくても測れるようにという工夫だそうです。
方法としてはいたって単純ですが、目の前で選別をするので大粒の比率は一目瞭然。
農家も取引所も買い付け価格に納得して、取引に応じてくれるとのこと。こういう小さな仕組み、工夫を整備することで、事業が成り立っているのだと気づかされました。
その後、最後にグラミンユーグレナ社のポトアカリ支店に立ち寄りました。この支店ではポトアカリ全域の契約農家数や買い付け量を管理しています。
ちょうど現地のメンバーは畑に出てしまっている時間でしたが、同じ思いを持った仲間たちが、遠くバングラデシュの田園地帯で働いていることに感慨深く感じました。人種も、仕事も、文化も違う、でも大切にしている思いは一緒。そういう仲間がいることはうれしいことだと改めて思いました。
さて、ポトアカリの中心街に戻ってきた私たち。
次は往路と同じ船に乗って、今度はダッカに北上していきます。「黄金のベンガル」に沈む夕日を背に、翌日のバングラデシュ訪問の最終日に思いを馳せて、船室でぐっすりと眠りにつきました。
次回は最終回。ダッカの小学校訪問(GENKIプログラム)について、レポートします!
#バングラデシュ #SDGs #食料問題