2007年に始まった東京マラソンがムーブの火付け役となり、今や全国各地でフルマラソンの大会が開催されるようになりました。本格的なマラソンランナーではなくても、気分転換や運動不足解消としてランニングを取り入れる方もいらっしゃいますが、そもそも自分はマラソン向きなのかを遺伝子的にチェックする方法があります。
ユーグレナ社では、ユーグレナ・マイヘルスとジーンクエストの遺伝子解析サービスのゲノムデータをもとに、「マラソンランナー向きの遺伝子タイプが多い都道府県ランキング」を2024年2月に公開しました。
■『マラソンランナー向きの遺伝子タイプ』とは?
身体能力と遺伝子の関連については、古くからさまざまな研究が行われていて、筋力や持久力についても関連を示唆する遺伝子が見出されています。
筋力を決定する因子の1つは「筋線維組成(速筋と遅筋の割合)」です。筋線維は大きく分けて、速筋線維と遅筋線維の2種類があり、マラソンランナーなど持久力が必要なスポーツ選手は遅筋線維が多いといわれています。遅筋線維は、酸素を用いて糖質や脂質を分解してエネルギーを産出する酸化系代謝が発達しているためです。一方で、速筋線維は、酸素を用いずに糖質を分解してエネルギーを産出する解糖系代謝が発達していて、短距離ランナーなど瞬発力が必要なスポーツ選手は速筋線維が多いといわれています。
そこで、ユーグレナ社では『マラソンランナー向きの遺伝子タイプ』を定義するにあたって、筋繊維と持久力に関する遺伝子解析項目に注目しました。
■今回の調査で解析した項目について
項目①「短距離ランナータイプ(SNP:rs1815739)」
速筋線維と遅筋線維のどちらが多いかに関する項目で、次の3つのタイプがあります。
- 若干マラソンランナーに多く、短距離選手に少ないタイプ(遺伝子型:TT)
- 短距離ランナーに多いタイプ(遺伝子型:CT)
- 短距離ランナーに多いタイプ(遺伝子型:CC)
このうち、「若干マラソンランナーに多く、短距離選手に少ないタイプ(遺伝子型:TT)」が、『どちらかというと遅筋線維の方が多い遺伝子タイプ』に該当します。
項目②「持久力(SNP:rs4343)」
運動時の持久力と遺伝子に関する項目で、次の3つのタイプがあります。
- 最大酸素摂取量が多く、持久力が高めのタイプ(遺伝子型:AA)
- 持久力が一般的なタイプ(遺伝子型:AG)
- 最大酸素摂取量が少なく、持久力が低めのタイプ(遺伝子型:GG)
※この項目での持久力の評価は、「最大酸素摂取量」という「1分間に体内に取り込まれる酸素の最大量」を指標として行われます。酸素の消費量が多いほど、体内で多くのエネルギーが作り出され、エネルギーの生産量が多いほど長く身体を動かすことができるためです。最大酸素摂取量には心臓のポンプ機能や血液運搬、骨格筋、肺拡散能力などが関与しており、身体能力の総合力ともいえます。
今回の調査における『マラソンランナー向きの遺伝子タイプ』とは、項目①「短距離ランナータイプ(SNP:rs1815739)」で「若干マラソンランナーに多く、短距離選手に少ないタイプ(遺伝子型:TT)」に該当し、かつ、項目②「持久力(SNP:rs4343)」で「最大酸素摂取量が多く、持久力が高めのタイプ(遺伝子型:AA)」に該当する人のことを指します。
つまり、「どちらかというと遅筋線維の方が多いタイプで、持久力が高めのタイプ」に該当する人の割合を都道府県別に算出し、数値化しました。
■「マラソンランナー向きの遺伝子タイプ」が多い都道府県ランキング
ゲノムデータの解析による、『マラソンランナー向きの遺伝子タイプ』の人の割合が相対的に高い都道府県は、1位 鳥取県、2位 沖縄県、3位 富山県、4位 香川県、5位 石川県、6位 福島県、7位 青森県、8位 神奈川県、熊本県、10位 奈良県となりました。オリンピックや箱根駅伝などで活躍する名ランナーを多く輩出することから「長距離大国」と呼ばれる福島県は6位で、5位の石川県とは0.01%差でした。
【全ランキング結果はこちら】
【調査概要】
調査方法:ゲノムデータの解析をもとに調査
調査対象:「ユーグレナ・マイヘルス 遺伝子解析サービス」、「ジーンクエストALL」の利用者
対象者数:ゲノムデータ:57,449人
調査時期:2024年2月
調査項目:ゲノムデータ「短距離ランナータイプ(SNP:rs1815739)」と「持久力(SNP:rs4343)」の2項目を調査し、「若干マラソンランナーに多く、短距離選手に少ないタイプ(遺伝子型:TT)」、かつ、「持久力が高めのタイプ(遺伝子型:AA)」に該当する人の割合を都道府県ごとに算出
【ユーグレナ・マイヘルス 遺伝子解析サービスとは】
個人の健康リスク・体質の遺伝的傾向・祖先のルーツについて350項目以上の遺伝子型を解析するサービスです。太りやすさなどの体質や、がん・糖尿病などの病気発症リスクに関する遺伝子情報、病気の予防のためにあなたができることをチェックできます。また、体質や病気の発症は遺伝要因だけでなく、食生活や生活環境など環境要因も大きく影響を受けるため、自分の遺伝子情報を理解したうえで生活習慣を見直す際のヒントとなります。
当社の遺伝子解析サービスには、運動に関する解析項目として、今回調査対象とした項目のほか、「筋肉の柔軟性」、「運動習慣」、「運動の効果」などがあります。また、遺伝子解析項目は定期的にアップデートしていて、2024年1月には、「妊娠悪阻(重症のつわり)」の項目の新規追加を実施しました。詳しくはこちらをご覧ください。