スラムの暮らしを支える水
【2022年4月の活動報告①】
1.スラムの暮らしを支える水
安全な飲料水の確保は、人々が健康に生きていくために欠かせないものです。昨今、耳にすることが多くなったSDGsにおいても、2030年までに達成すべき目標の1つとして、「すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ平等なアクセスを達成すること」を挙げています。
国際連合の報告書によると、2000年から2020年の20年間で、新たに約20億人が基本的な飲料水の提供を受けられるようになりました。しかし、2020年時点で未だ世界の10人に1人、約7億7,100万人が安全な飲料水を入手できずにいます。※1
同報告書によると、バングラデシュでは、人口の41%が安全に管理された水を確保できていません。同国では、洪水・干ばつ・サイクロンが頻繁に起こるため、安定的な水の供給が容易ではありません。特に、乾季である10月~3月には水不足が顕著になります。そのような同国特有の課題がある中、スラムに住む貧困層の人々は、清潔な水を確保できる環境が特に限られています。
首都ダッカにおいて、GENKIプログラムが支援しているスラムは22か所あります(下図)。今回はその中でも、ミルプール地区にある2つのスラムの水の利用状況について紹介します。
1つ目のスラム、バウニアバッドには現在約12万人が暮らしているといわれています。給水は、ダッカ上下水道公社から、朝と夜の2回行われます。住民は、水道を通して汲みとった水をタンクに貯蔵して、飲み水や家事をする際の生活水として使用します。しかし、午後になってようやく給水が始まるという日も少なくありません。また、給水量は、各家族全員にとって十分な量はなく、乾季には水不足が一層深刻化します。
2つ目のスラム、シティ・コロニーには約20万人が暮らしているといわれています。ここには水道が通っていないため、給水車で水を供給しています。しかし、乾季になると何日間も水の供給が止まってしまう場所もあります。そのようなときは、近隣の地下水を汲み取りに行くことで水不足をしのいでいます。
供給される水も、地下水から汲む水も、飲料水には決して適していません。それゆえ、煮沸消毒する必要があるものの、台所の設備が不十分だったり、仕事で忙しいために短時間の煮沸で十分な消毒がされないまま使ってしまうこともあります。
安全な水が確保できないと、日常生活や健康において深刻な影響が発生します。例えば、不衛生な水を飲むことで、下痢やコレラなどの病気の原因につながります。また、清潔な水で手を洗えないために、様々な病気の感染リスクが高まってしまいます。
このような状況ですが、GENKIプログラムが支援している学校では、子どもたちに水を供給するために様々な取り組みを進めています。
バウニアバッドのスラムにあるバウニアバッド・アリム学校では、地下水を安定的に汲みとれるよう、給水ポンプを活用しています。水不足が起こりにくいため、子どもたちだけではなく、近隣の住民もその水を利用しています。また、シティ・コロニーのスラムにある学校では、浄水フィルターを使うことで、安全な飲料水を子どもたちに供給しています。
以上のように、同国では安全に管理された水の安定的な確保が大きな課題で、特にスラムにおいては深刻です。しかしこれらの学校の活動は、子どもたちへの安全な水の供給に貢献しています。
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