ユーグレナ研究開発部門の主催で、「ユーグレナ フューチャーマテリアルカンファレンス 2020」が2020年8月31日にライブ配信で開催されました。本イベントでは、未来に求められる食品素材の展望として、宇宙における食に関する開発の方向性や、微細藻類等の可能性についてのプレゼンテーション・ディスカッションが行われました。今回、その一部を書き起こしでご紹介。今回は前編として、宇宙キャスターとして活躍中の榎本麗美さんが登場です。
宇宙×生物(食)の魅力
こんにちは!宇宙キャスターの榎本麗美と申します。本日は「ユーグレナフューチャーマテリアルカンファレンス2020」にお越しいただきましてありがとうございます。このパートでは、私から宇宙食とユーグレナの魅力についてご紹介していきたいと思います。
と、その前に、自己紹介をさせてください。改めまして宇宙キャスターの榎本麗美と申します。私は、高校時代に宇宙物理にはまりまして、一度テレビ局にアナウンサーとして入社したのですが退社し、現在は「宇宙キャスター」として、日テレNEWS24などのテレビ番組や、YouTubeチャンネル、宇宙関連イベントへの出演などを通じて宇宙のおもしろさを紹介する活動をしています。
宇宙に関するトピックスはさまざまですが、今、私が注目しているのは「食」に関してです。もともと大学時代は理工学部でバイオサイエンスを専攻していたので、「食」を担う生物への関心は高かったのですが、近年現実味を帯びてきた宇宙での長期滞在を前提とした「食」のあり方についても非常に興味を持っています。
ひとくちに「宇宙食」といっても、種類はさまざまですが、本日は宇宙での長期滞在を前提としたときに重要だといわれている昆虫食とユーグレナについてご紹介したいと思います。
昆虫食の可能性
昆虫は、近年注目されている食材です。2013年には、国際連合食糧農業機関(FAO)が未来のたんぱく質の供給源として昆虫を推奨していますし、複数のベンチャー企業が昆虫食の開発に取り組んでいます。また、すでに世界各地で昆虫は貴重な食料として定着しています。例えば、先日訪れたカンボジアの村では、昆虫を食材としてとらえていて、昆虫食は文化として根付いていました。
では、なぜ昆虫食が注目されているのかというと、
①たんぱく質をはじめとする豊富な栄養素を含んでいる
②たんぱく質の供給源として牛などの家畜を代替することで、牛のゲップなどに含まれるメタンガスを削減することができ、地球温暖化対策につながる
③省スペースで繁殖が容易
などの特徴があるからです。
このような特徴を持つ昆虫食は宇宙食としても注目されていて、JAXAやユーグレナ社などが参画する「SPACE FOODSPHERE」でも研究開発が進められています。
昆虫よりすごい?ユーグレナの可能性
ここまで、昆虫食の素晴らしさについてご紹介してきましたが、実は私が昆虫よりも素晴らしいのでは?と、注目しているのがユーグレナです。
ユーグレナは、たんぱく質を含む59種類の豊富な栄養素を含んでいますし、また、植物と同じく光合成により成長しますので、二酸化炭素を取り込み、酸素を放出してくれます。つまり栄養豊富な食材としても、地球温暖化対策や宇宙の閉鎖空間での炭素循環の観点からも優れていると思います。さらにいうと、見た目が美しいですね。昆虫食のハードルの1つは見た目の問題なのですが、その点、ユーグレナが水の中を泳いでいる姿はすごくきれいです。宇宙空間では、食材としてだけでなくインテリアとしても活用できるのではないでしょうか。
そして現在、ユーグレナ社ではユーグレナでの宇宙食の研究開発にも取り組んでいると聞いています。目下、味を改良中とのことですので、宇宙にもっていく前にぜひ試食させてほしいです。
宇宙食の研究は地球も救う
ここまで、宇宙での長期滞在を前提としたときの「食」に関する課題や可能性についてお話してきましたが、実は未来の「食」に関する課題は宇宙食だけではありません。将来、宇宙食のほかに地球人口の増加に伴う食料難や、自然災害やそれに伴う防災食といった課題に取り組むことが必要になるといわれています。
では、これらの課題にはどのように取り組めばいいのでしょうか。実は、宇宙食の研究がこれらの課題解決にも役立つといわれています。特に本日紹介した昆虫食は人口増加に伴うたんぱく質の供給源の不足を補う存在ですし、ユーグレナは光合成により地球温暖化対策を促進します。
サステナブルな「食」をどのように実現していくべきか。未来の「食」や宇宙食について考えるうえで重要なテーマです。これからも昆虫食やユーグレナの魅力などに注目し、サステナブルな「食」の実現に貢献していきたいと思います。
※本記事は、「ユーグレナフューチャーマテリアルカンファレンス2020」のイベント取材をもとに加筆修正して掲載しています